自民党は23日、政治資金パーティー裏金事件を受け、政治資金規正法の改正案を公表した。国会議員が関係する政治団体について、議員本人の責任を明確にし、外部監査を強化するなどの内容だが、専門家はどう見ているのか。政治資金に詳しい日本大の岩井奉信名誉教授(政治学)に聞いた。【安部志帆子】

 自民案では、政治資金収支報告書の不記載や虚偽記載について、政治団体の会計責任者だけでなく、代表である国会議員本人にも責任が及ぶように監督責任を明確化した。

 具体的にはまず、収支報告書が適正に作成されていることを議員本人が確認したことを示す「確認書」の交付を義務付けた。総務相や都道府県の選挙管理委員会に収支報告書を提出する際、この確認書の添付が必要になる。

 その上で会計責任者が不記載などで処罰された場合、議員が収支報告書について確認しないまま確認書を交付していれば、議員本人にも罰則が適用され、公民権が停止されるとの内容だ。

 岩井氏は議員による「監督」の内容が確認書という形で具体化されたことは評価しつつ、会計責任者が処罰された場合にのみ議員の責任が問われる点を疑問視する。

 今回の裏金事件で立件されたのは、派閥の会計責任者らや、不記載額が4000万円以上に上るなど、ごく一部のケースだった。岩井氏は「検察によって立件対象が線引きされ、裏金を受け取った議員全員が対象になるわけではない。それで国民の理解が得られるとは思えない」と指摘する。

 さらに自民案では、政党から政治家個人に支出され、使途の公開義務がない「政策活動費」に対する規制や、政治資金パーティーの購入者に関する公開基準の引き下げなどについて具体的に記さず、課題を先送りした。

 岩井氏は「全く当事者意識がない。自分たちが率先して制度を変えるという決意が見えない」と批判。対象を国会議員が関係する政治団体に絞ったことについても「一時的に取り繕うための対策でしかない。政治とカネの問題は、国会議員だけの問題ではなく、首長や地方議員でも起きている」と疑問を呈した。

 岩井氏は国家権力ではない第三者が政治資金について管理監督するチェック機関を作り、悪質なケースについては告発できる体制が必要だと提言した。