群馬県前橋市に本店を置く東和銀行(photo by ご近所ワーク)

群馬県前橋市に本店を置く第二地銀の東和銀行<8558>は、2017年に創業100周年を迎えた老舗格の第二地銀だ。創立は1917(大正6)年6月で、現在の群馬県東部、館林市に本店を構える群馬貯蓄無尽として誕生した。翌1918年4月には本店を前橋市に移転、称号を群馬無尽と変更した。

3無尽の合併から、隣県に拡張

群馬無尽は1942(昭和17)年9月、同じ群馬県内の関東無尽、上毛無尽と合併し、群馬大生無尽を設立した。そして営業区域を「群馬県一円」から、埼玉県、栃木県、東京都、長野県へと拡張していった。

営業区域は「群馬にとどまらない」という気概があったのだろう。商号から「群馬」の名を外し大生無尽としたのは1949年5月のこと。1951年9月には埼玉県の小川無尽と合併し、同年10月には相互銀行法の施行により大生相互銀行と改称した。

大生相銀時代の1973年4月には東京の深川信用組合と合併。1977年4月には同じく東京の赤羽信用組合と合併した。そして2001年に、1999年に破綻した新潟中央銀行の営業を一部譲り受けた。当時、新潟県のほか長野県、群馬県にある地銀数行が新潟中央銀行を分割し、買収をしたわけだ。最近では、2020年10月にSBIホールディングスと資本提携を締結し、共同のファンドをつくっている。

実は埼玉県のほうが店舗網は充実

東和銀行は群馬県、特に県庁所在地の前橋市に根差した金融機関と思われがちだ。ところが、3無尽の合併により規模を拡大し、さらに隣県に営業基盤を広げ、東京の2信組を合併しているところを見ると、地域に根差しつつも地域だけに収まらない積極性を感じることができる。

実際に2014年12月には筑波銀行(茨城県土浦市)、栃木銀行(栃木県宇都宮市)と北関東の地銀3行による広域連携協定を結び、地域経済の活性化に取り組んでいる。また、南の埼玉県内には41店舗を構え、群馬県内の36店舗よりも多い。都内にも北部・市部を中心に8店舗を構える。埼玉県民にとっては、主要なまちには東和銀行の店舗があるため、地元埼玉の地銀のように感じるはずだ。

なお、昭和期に拡張した長野県内に、現在は店舗がない。

また、東和銀行では法人需要を深耕すべく、2006年4月に東和新生会という組織をつくった。最近では産・官・学・金が協働し、さまざまな業種・業態の顧客取引先が自慢の商製品やサービスを携えて集結する「異業種交流型」の展示商談会を開催し、親交を深めている。2023年11月に開かれた第18回ビジネス交流会では北関東の他県からも多くの来場者が訪れ、その数は2500人を超えるほどだったという。随時、セミナーや講習会も実施している。

2024年の上毛新聞の新春インタビューで江原洋頭取は、「顧客から倒産を出さない覚悟で取り組む」と決意を新たにする。その積極性、攻めの経営は今後も健在だ。

文:菱田秀則(ライター)

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