高騰する中古国産スポーツカー

 国産メーカーの車は、その信頼性や環境性能から世界的に高く評価されているが、それとは別に、1980〜1990年頃の国産スポーツカーが海外で高値で取引されているのをご存じだろうか。

 日本国内でも20〜30年前のさまざまなタイプの中古車が取引されているが、その価格相場は新車に比べてかなり安い。車は多くの部品で構成されているが、どれも耐久性があり、新車から5〜10年程度経過すると経年劣化による故障が増えてくる。

 そのため、中古車の価格は主に

「年式」

で決まり、10年以上経過した中古車は新車の半額以下になるのが一般的だ。しかし、一部の中古車、特にスポーツカーは海外市場では新車価格を大きく上回る価格で販売されているのだ。

 例えば、1989(平成元)年から1994年まで生産された日産スカイラインGT-R R32は、新車時の価格は430万円から530万円だったが、現在米国のオークションサイトでは1000万円前後で取引されている。トヨタ・スープラやホンダNSXといった同世代のスポーツカーも1000万円以上で取引されており、市場価値は右肩上がりだ。

 この人気の背景には、高性能で信頼性の高い日本のスポーツカーが、昔から米国の若者の間で人気があったこともあるが、人気カーアクション映画『ワイルド・スピード』シリーズにこれらの車が登場したこともある。

 また、日本のアニメやゲームにも1990年代のスポーツカーが登場しており、日本文化が海外に広まった結果であろう。

 その結果、現在日本ではこれらのスポーツカーの買い取り価格が高騰しており、車の状態によっては新車価格よりも高く買い取ってくれるディーラーもある。ただし、すべてのスポーツカーが高値で買い取られるわけではなく、年式によっては

「25年ルール」

に当てはまる車が対象となるようだ。

スカイラインGT-R V・スペック II(画像:日産自動車)

25年ルールで次の人気車種も高騰中

「25年ルール」とは、米国で輸入車に課される規制のなかのルールである。例外規定である25年ルールによって、国産中古車の輸入が認められている。

 米国では、海外から輸入される車を規制する法律があり、米道路交通安全局(NHTSA)の定める法律に適合しない車は輸入できない。輸入するためには、安全基準などに適合するように改造しなければならない。米国では左ハンドル車しか認められていないため、特に日本車の輸入には大きな障害となっている。

 しかし、例外として製造後25年を経過した車は規制対象外と規定されており、右ハンドルの日本車も米国に輸入できる。この規定により、1980年代から1990年代にかけて製造された25年以上経過した車の輸入が可能となり、それまで欲しくても手に入らなかった日本の中古車の米国での価値が大きく高まったのだ。

 2024年現在、25年ルールは1999(平成11)年程度まで対象が拡大されているため、価格が高騰する中古車にも変化が生じている。

 前述のスカイラインの場合、R32型に続いて1995年にR33型GT-R、1999年にR34型GT-Rが登場しており、R34型GT-Rが解禁されたことで一気に価値が上がりそうだ。特にR34型GT-Rは、映画などにも登場しているが、スカイラインGT-Rシリーズの最終モデルということで人気が高い。GT-Rはその後、2007年にスカイラインとは別のモデルとして登場した。

 そのため、日本では1999年以降に製造されたスポーツカーは買い取り価格が高騰することが予想されるので、オーナーは注視しておいたほうがいいかもしれない。

車内をのぞき込む不審な人物(画像:写真AC)

防犯対策の重要性

 一方で、往年のスポーツカーの価格高騰は中古車盗難の増加にもつながっており、現在も中古車を所有するユーザーは、より一層防犯に気を配る必要がある。

 もともと日本の中古車は、その信頼性と耐久性から海外でも人気が高く、窃盗団はこの状況を利用して一般ユーザーの所有する車を盗み、海外で販売している。

 盗難が多いのは、トヨタのランドクルーザーやハイエース、プリウスといった実用性の高い乗用車だが、最近では1990(平成2)年頃の日産GT-Rやトヨタ・スープラ、ホンダ・シビックといったスポーツカーの盗難も増えている。
その理由はもちろん、海外で高値で転売できるからで、25年ルールの対象車種が増えれば盗難被害に遭う可能性も高まる。

 特に1990年前後に製造された車は、現在の感覚からするとセキュリティーが非常に甘く、盗難に遭いやすい。ハンドルロックやセキュリティーアラームなどの対策はしているが、大規模な窃盗団はセキュリティーを無効にしたり、強引に車を盗んだりするため、盗難件数は増加傾向にある。

 青空駐車場はもちろん安心できないが、施錠されたガレージに止めていても盗難に遭うケースが増えており、完全に安全とはいい切れない。窃盗団はターゲットとなる車を見つけると、ユーザーの自宅や駐車場を突き止め、人気のない時間帯や盗難に遭いにくい時間帯を探すという。

 このような状況に対し、最近では中古スポーツカーの専門業者やセキュリティー会社の協力のもと、さまざまな対策が練られており、今後は衛星利用測位システム(GPS)発信機やイモビライザーの装着など、安全確保に万全を期す必要があるだろう。

 今後、2000年以降に製造された車も25年ルールの対象となるので、そのような車のユーザーは今から自衛策を考えておく必要がある。