ナンバープレートの示すもの

 公道を走る自動車やバイクなどの車両に装着されるナンバープレートは、新規登録申請時に陸運局から交付される。

 その際に付与される個別ナンバーが、車両を識別する役割を果たす。現在では、好きな番号を指定できる「希望ナンバー」もあるが、いずれも1台につきひとつで、同じものは存在しない。

 ナンバープレートという呼び名は統一されているが、道路運送車両法の種類によって正式名称が異なる。普通自動車、小型自動車(二輪を除く)、大型特殊自動車に付けられるものは「自動車登録番号標」、軽自動車や125cc以上の二輪クルマに付けられるものは「車両登録番号標」と呼ばれる。

 ナンバープレートには、上段左から「地域名」「分類番号」、下段左から「平仮名などの文字」「一連指定番号」が記載されている。プレートの色や文字や数字の違いから、それを見ただけでそのクルマの用途がわかる。

 最近では“走る広告塔”として「地方版図柄入りナンバープレート」も発行されている。また、以前はあまり見かけなかった「アルファベット入り」のナンバープレートも登場している。後者はどのような状況で導入されたのか。

アルファベットは分類番号の下2桁で使用(画像:JAF)

希望ナンバー枯渇問題

 アルファベット入りナンバープレートは、「希望ナンバー制(希望番号制度)」の普及により、普及し、枯渇した一部のナンバープレートを継続して提供するために導入された。

 車両の識別にも使われるナンバープレートは、一度使うと二度と使えない。そのため、1998(平成10)年5月に一部地域で、1999年5月に全国で始まった「希望ナンバー制」導入以降、人気ナンバーの枯渇問題が指摘されていた。

 この問題を解決するため、国土交通省が2017年1月1日に施行し、2018年1月から実際に交付されたアルファベット入りナンバープレートでは、上段右側の「分類番号」にアルファベットが導入された。

 具体的なアルファベットの導入方法は、地名の横にある3桁の「分類番号」の下2桁で使用でき、

・30A
・3AC
・5FH

などと表示される。使用されるアルファベットは、「A/C/F/H/K/L/M/P/X/Y」の10文字で誤認しにくい文字が採用された。

 当面は使い切ったナンバーから導入される。そのため、希望ナンバー制度が採用された場合はアルファベットナンバープレートが使用されるが、現時点ではユーザーが希望するアルファベットを選択することはできない。

ナンバープレートを解析することで交通量を計測(画像:ウィルスマート)

AIを活用した交通調査システム」

 ナンバープレートにはさまざまな情報が含まれている。例えば、普通自動車のナンバープレートは「自家用」なら白色、「事業用」なら緑色だ。また、「小型自動車」なら「5」や「7」、「普通自動車」なら「3」といったように、分類番号にも一定のルールがある。

 これらのルールにより、個々の車両の識別や管理が容易になっている。車両管理を担当する陸運局は、ナンバープレートから各車両が適切な検査を受けているか、安全基準を満たしているかなどを判断することができる。また、ナンバープレートによって、車両の所有者は、その車両が車庫証明手続き、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)、各種税金を順守していることを証明することができる。

 このほど、ウィルスマート(東京都江東区)が、ナンバープレートの情報をAIで解析する交通量調査システムを発売した。AIの画像認識を利用した交通調査は、映像を解析して交通量を計測できる。

 目視で確認できる車種(乗用車、バス、トラックなど)ごとの計測に加え、ナンバープレートを解析することで、レンタカーの台数やエリア外の車両の台数も計測できる。

 このように、ナンバープレートの文字や数字から、より詳細なデータを活用することができるのだ。

ナンバープレートのイメージ画像(画像:写真AC)

人気ナンバーへの関心

 クルマに欠かせないナンバープレートは、一見変わっていないように見えるが、実は時代とともに変化している。

 昭和の時代には欧州のような横長のナンバープレートが発行され、分類番号が1桁だった時代もあった。2006(平成18)年10月10日からは「ご当地ナンバー」が導入され、東京オリンピック前には「図柄入りナンバープレート」が交付された。

 これまでで最も大きな変化は、希望ナンバー制が解禁され、自分の好きな番号を選べるようになったことだろう。この制度の利用について、パーク24(東京都品川区)は2023年2月16日から22日にかけて、同社が運営するドライバー向け会員制サービスの会員5949人を対象にナンバープレートに関するアンケート調査を実施した。

 その結果、「希望ナンバー制度を利用していますか」という質問に対して、「はい」と回答した人は50%だった。また、「その番号に決めた理由」を聞いたところ、「好きな数字」と答えた人が35%おり、人気のナンバーに集中している可能性がうかがえる。

 人気ナンバーへの集中は当時から予想されていたことではあるが、アルファベットの導入により、引き続き人気ナンバーを使用できるようになるのは喜ばしいことである。

 しかし、アルファベットにも限りがある。そのため、数十年後にはまた数字が不足するかもしれない。今後どのような変化が起こるのか、興味深いところだ。