オートライト機能の効果
「オートライト機能」とは、走行中に周囲の明るさを感知してヘッドライトを自動で点灯・消灯する機能である。この機能により、ヘッドライトの点灯時間を早めることができ、1日のうちで最も事故が起きやすいといわれる薄暮時間帯(日没前後1時間)の事故を防ぐことができる。
警察庁のウェブサイトには、2018年から2022年までの5年間の「薄暮時間帯における死亡事故の発生状況」が掲載されている。そのなかの「時間帯別の死亡事故件数」によると、全体件数1万4499件のうち、
・17時台:993件
・18時台:920件
・19時台:837件
となっている。日没と重なる17時から19時の間に発生したものが合計2750件で、他の時間帯と比べて最も多い。
また薄暮時間帯の1時間あたりの「自動車対歩行者」事故件数は、昼間の約3.3倍にもなるという。
こうしたなか、国土交通省は2016年10月に「道路運送車両の保安基準」を一部改正し、2020年4月1日からオートライト機能の搭載を義務化した。
オートライト機能は2020年4月以前に販売されたモデルでも搭載されているものがある。ヘッドライトスイッチにオートライトスイッチが追加され、ドライバーの判断で「自動」「手動」を切り替えることができる。ただ、十分に暗くなったときにライトを点灯させる基準もメーカーによって異なっていた。
しかし、搭載義務化によって法的な基準が確立され、2020年以降の新車から新保安基準が適用されることになった。そもそも、なぜ義務化されたのだろうか。
「ドライバー無灯火を防ぐ新基準
道路交通法では、ヘッドライトを点灯すべき時間帯を「日没から日の出までの夜間」と定めている。しかし、義務化される以前は明確な基準がなく、ドライバーの感覚に任されていた。オートライト搭載車であっても、基準がないために点灯のタイミングはメーカーごとに異なっていた。
その結果、死亡事故が多発する薄暮時には、ライトを点灯している車と点灯していない車が混在している。義務化の目的は、このような状況を解消し、ライトの早期点灯によって安全性を高めることにある。
2020年4月施行の義務化では、これまで明確でなかった基準が新保安基準として採用された。
最大の違いは、
・一定の暗さになると強制的に点灯する
・ドライバーが手動で消灯できない(駐停車時には消灯可能)
という点だ。また、メーカーごとに異なっていた点灯のタイミングが統一され、周囲の明るさが1000ルクス以下になると2秒以内に自動的に点灯するようになった。
こうした保安基準の確立により、ドライバーの感覚に頼らずにライトを点灯させることが可能になり、ドライバーの「うっかり」や「思い込み」による無灯火を防ぐことができるようになった。
オートライトの利点と課題
安全のために必ず点灯するヘッドライトは、ドライバーの視界を確保するだけでなく、自車の存在を周囲に知らせる役割も果たしている。安全性を高めるオートライトにもメリットとデメリットがある。
最大のメリットは、ヘッドライトの点灯忘れを防げることだ。これまでは点灯のタイミングがドライバーに委ねられていたため、点灯し忘れる車両もあった。
しかし、オートライトが義務化されてからは、そうした心配がなくなった。光量が1000ルクス以下になれば、ドライバーの意思に関係なく点灯するからだ。
一方、ドライバーの意思に関係なく点灯することはデメリットでもある。ドライバーが暗い場所にいると、点灯したままになる可能性がある。駐車時に消灯したい場合もあるが、メーカー間で消灯方法が統一されておらず、簡単に消灯できない場合もある。
新保安基準の適用時期
メリットもデメリットもあるオートライトが義務化され、新保安基準が設けられた。その結果、薄暮時間帯の安全確保にシフトしている。
しかし現時点では、この義務化はすべての車両に適用されているわけではない。車種や新型車か継続生産車かによって、義務化の適用時期に違いがあるのだ。まず、2020年4月以降に販売される新型乗用車から適用が開始され、継続生産車については2021年10月から適用が開始された。
乗車定員11人以上の旅客自動車および車両総重量3.5t超の貨物自動車の新型車は2021年4月から、継続生産車は2023年10月から適用された。
また、すでに販売されている車や中古車については、義務化はされていない。そのため、従来車はオートライト機能がなくても車検に通るため、義務化の対象にはならない。
オートライトが義務化されたとしても、新保安基準に沿ったオートライト機能が普及するまでには10年以上かかるといわれている。どのような機能が搭載されようと、実際に安全運転をするのはそれぞれの車のドライバーである。今後も安全運転を心がけ、早めのライト点灯を心がけることが大切だ。