鹿児島県の志布志市と大崎町は4月、使用済み紙おむつの一般家庭からの全域回収を開始した。ユニ・チャームが開発したオゾン処理技術を活用、同社とそおリサイクルセンターと連携して再資源化を図り、世界初の紙おむつの「水平リサイクル」に取り組む。住民はふた付きの専用ボックスに専用袋に入れて出すことになり、家庭での保管期間が短くなり衛生的に。一方で、分別の手間や袋購入の負担感の軽減、ペット用や生理用品といった対象外となる品目の周知が課題となりそうだ。

 焼却炉を持たない両自治体は、埋め立て処分場の延命化を図るため、25年以上27品目のごみ分別に取り組む。紙おむつはこれまで埋め立てられる「一般ごみ」として回収してきた。

 さらなる延命化を図り、持続可能な開発目標(SDGs)推進を目指すため、一般ごみの約2割を占める紙おむつの再資源化を検討。2016年以降、志布志市、大崎町、そおリサイクルセンター、ユニ・チャームが協定を結び、19年に覚書を締結。これまで4者で再資源化技術の実証実験と、モデル地区での分別収集を行ってきた。

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 志布志市は4月、自治会のごみステーションと校区公民館約500カ所に専用ボックスを設置。うち470カ所分は紙おむつから再生されたプラスチックを配合し作られている。いつでも捨てることができ、週1回回収される。

 同市市民環境課は「広報紙や回覧板、説明会などで理解を呼びかけていきたい」としている。

 大崎町は156自治会の220カ所にボックスがあり、生ごみ収集日に出すことになっている。町は22年12月、平良(てら)自治公民館で説明会を開催。環境政策課によると、住民からは乳幼児や高齢者用に加え、生理用品、ペット用の取り扱いへの質問があった。後者はいずれも現時点では再資源化の技術面から回収対象には含まれていない。

 町衛生自治会の山野利高副会長(64)は「住民は25年の習慣で協力しているが、高齢化でごみ出しや分別が大変になっている人が増えているのが実情。紙おむつも含めて課題を掘り起こし、町に伝えて解決につなげていきたい」と話す。

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 両自治体とも住民は専用袋(10枚入り100円)に入れてボックスに捨てる。紙おむつや尿取りパッド、お尻ふきなどが対象。こまめに捨てられ、家庭での保管期間短縮や分別廃棄が進むとリサイクルしやすくなる利点がある。

 両自治体によると、これまでの実証では、不純物の混入や回収率が課題となった。

 長年一般ごみとして扱ってきたことやプライバシーの観点から、従来の捨て方を続ける住民も少なくないことが予想される。高齢者や障害者、子育て世帯はもちろん、転居・移住者向けの丁寧な周知が求められている。


 
 水平リサイクル 使用済みの製品を原料に用いて、同じ種類の製品を再生するリサイクルのこと。ユニ・チャームは、紙おむつの主要原材料の一つ「パルプ」をオゾン処理技術で未使用品と同等品質に再生する技術を構築。「紙おむつから紙おむつへ」は世界初の試みで、リサイクルパルプを原材料にした紙おむつを生産する。