民間組織「人口戦略会議」が4月末に公表した報告書で鹿児島県宇検村は県内で唯一、100年後も若年女性が多く残る「自立持続可能性自治体」に位置付けられた。村は明確な要因は分からないと戸惑いつつ、「“結いの精神”が移住者の定着につながっている」とみる。

 2050年までの30年間で若年女性人口が50%以上減ると推計された「消滅可能性自治体」は県内で15市町村。10年前の前回分析から半減した。

 消滅可能性から抜けた宇検村は減少率が14.6%と県内で最も低い。担当者は「山村留学といった施策の積み重ねが大きいのでは」と受け止める一方、「人口1500人余りの小さな村なので1人減るだけで影響が大きい。結果に満足せず、引き続き丁寧に施策を進める」と気を引き締める。

 村は廃校の危機にあった阿室小中学校を守ろうと10年度に山村留学を始めた。高齢化が進み里親探しが難しいため「親子で移住」を条件としたことが、結果的に若い世代の人口増につながる。

 村教委によると、これまで児童生徒80人(54世帯)を受け入れ、半数以上が中学卒業まで在籍。卒業後も保護者らが集落に残るなど定住率は高い。

 地域ぐるみの子育てやお裾分け文化といった“結いの精神”が根付き、移住者にも例外でない。島中心部の奄美市名瀬から車で1時間。村企画観光課の泉清一郎課長補佐は「便利な地域とは言えないが、都会の人が住みたくなる人間関係は築きやすい」と語る。

 15年度から受け入れる地域おこし協力隊は、任期を終えた5人中4人が定住。群馬県から家族3人で移住し、現在は役場の会計年度任用職員として働く坂井遥さん(31)は「近所付き合いが濃く、母親同士も友達のような関係」と子育てのしやすさを実感する。

 クルマエビの養殖や黒糖焼酎工場など人口に対して働き口は多い。県が発表した21年度の1人当たりの市町村民所得は263万円。奄美群島内トップだ。

 村が課題に挙げるのは住宅確保だ。23年度から空き家改修事業に取り組むが、予算は限られ全ての需要に応えるのは難しい。群島全体の課題でもあり、空き家対策などを後押しする見通しの改正奄美群島振興開発特別措置法にも期待を寄せる。