鹿児島県阿久根市は2日、イカの産卵場所となる「イカシバ」約700本を、市街地近くの海に投入した。うち約200本は放置竹林で伐採したコサンダケを使用。山と海の再生を目指して関係者が連携し、放置竹林解消、漁業資源増殖の一石二鳥を狙う。

 イカシバは、海底に沈めた枝の束を海藻に見せかけ、イカに卵を産ませる昔ながらの増殖方法。同市の山間部は放置竹林が増加する一方、海は磯焼けで漁業資源の保護が問題となっている。このため、市農政林務課と環境水産課が放置竹林の活用を計画した。

 成果が上がれば、竹の供給で収益を得る仕組みをつくり、釣り客誘致やグルメイベントにつなげたいという。北さつま漁協や県森林組合連合会などと協力して、イカの産卵期に合わせ5月から7月にかけて設置することにした。

 5月1日は山間部の田代地区で住民らが竹やぶを伐採。からみつくツタを取り除き、竹を2メートルほどに切りそろえ、トラックで阿久根新港へ送り出した。

 港では若手の漁師と森林事業者、市や県職員など約30人が、ベテラン漁師の手ほどきを受け、10〜15本ずつひもで束ね、イカシバ作りに取り組んだ。

 参加した、市政に助言する「たからのまちマネージャー」の森林業コンサルタント、長野麻子さん(52)=東京都=は「ぜひ経済循環につなげて」と期待した。

 完成したイカシバは2日朝、漁船で沖へ運ばれた。福島浩副市長は「夢があり、山と海の人々の接点になる。将来は子どもたちの体験活動に生かしたい」と話した。