福井市在住の作家・詩人「ほろほろ落花生」さんの文芸書「ぼくは君がなつかしい ほろほろ落花生全集」(破滅派刊)が4月5日、発売された。(福井経済新聞)

 ほろほろ落花生さんの近影

 かねて傾倒する反出生主義を軸に創作活動を展開する作者が、「人生を総括する書」を掲げ出版した。約四半世紀にわたる活動を通じて著した、詩、散文、小説などのほか、同書の編者で作者の盟友でもある高橋文樹さんが手がけたノンフィクションも収録した。

 ほろほろ落花生さんは1979(昭和54)年、同市生まれ。高志高卒業後、東京大仏文科を経て大手製鉄会社に就職するも、原因不明の体の痛みに悩まされ会社を退職。以来、大学時代に出会った高橋さんらと破滅派を創設したり、社会福祉法人でのアルバイトの傍ら保育士資格を取得したりするなど、福井、東京と生活拠点を移しながら創作を続けてきた。

 紙面は、1990年代のポップカルチャーに言及した「ぱるんちょ祭り」、テスト問題を模した作品で自ら組み版データを作成したという「Re: 現代文」、インタビュー記事の形式を取った「最後の文学者」など、バラエティーに富んだ表現で構成する。後半には「ほろほろ落花生前史」とも言える、小学生時代の作文4編も収めた。

 ほろほろ落花生さんは「辣腕(らつわん)編集者や、稀有(けう)なデザイナーの協力の下でようやく完成した『奇跡の1冊』と言える本。ほろほろ落花生という人間の全てが凝縮された書籍であり、この本を作り出すことで私の魂は完全に焼き尽くされた」と振り返る。

 高橋さんの手により、当事者が言葉にできなかった性被害の記憶や、就職氷河期での出来事など、作者のバックグラウンドを知る手がかりも示された。高橋さんは「1人の文学者の人生に訪れた詩情、怨恨(えんこん)、悲しみ、怒りなど、清濁全てを『封印』した他に類を見ない奇書。福井県は社長輩出率が全国一と聞くが、ほろほろ落花生というとてつもない文学者もまた福井にいることを皆さんに知ってもらえれば」と呼びかける。

 仕様はA5判524ページ。価格は2,970円。同社通販サイトなどで販売する。