企画展「中野裕介/パラモデル展 よろぼう少年、かなたの道をゆく>>>《俊徳丸伝説》であそぶ」(>は右向きの三角)が現在、東大阪市民美術センター(東大阪市吉田6、TEL 072-964-1313)で開かれている。(東大阪経済新聞)

 「俊徳丸の模型(よろぼう少年)」と「かしこい犬の模型(よろぼう犬)」

 鉄道玩具「プラレール」を使ったインスタレーションで知られるアートユニット「パラモデル」の中野裕介さん。東大阪市出身・在住のアーティストで、京都市立芸術大学大学院在学中に林泰彦さんとユニット活動を始め、2003(平成15)年に「パラモデル」として活動を始めた。2007(平成19)年に東大阪に戻り、地元について調べた際に河内地方に伝わる「俊徳丸伝説」を知った中野さんは、ユニット活動と並行して俊徳丸伝説のリサーチを始め、同伝説をモチーフにした作品を作り続けている。

 東大阪市内に所在する「俊徳道駅」の名に由来する同伝説を基に、能楽「弱法師」や説経節「しんとく丸」などの芸能や、寺山修司の舞台「身毒丸」などが生まれた。中野さんによると「バリエーションがあるが、俊徳丸は12、13歳くらいの少年で、盲目で足がよろよろしている。ハンディキャップを背負っているけど健気な少年」で、企画展のタイトルにも使われる「よろぼう」とは「よろよろ歩く」という意味の古語。中野さんは「病気であるとか弱いとか、何か欠落していること自体に昔から関心を持っている」と話す。

 第1・2展示室の中央付近には、「俊徳丸の模型(よろぼう少年)」と「かしこい犬の模型(よろぼう犬)」を展示。「2015年に西成区山王の福寿荘というアパートの一室を作品にしてほしいと言われ、俊徳丸の部屋をテーマにした。模型はその中心の作品。模型は昔から持っているテーマの一つで、ほんまもんじゃない、遊ぶためのものという方向性で作った。犬は大学院の時から描いていたキャラクターで、なぜか手がない。ない方の手からウサギとか車とかが生まれて消えていくというアニメーションを無意識で作っていたが、俊徳丸に出会った時にその発想に至ったベースが俊徳丸にあったのではと思ってアプローチするようになった」と振り返る。

 展示室は、プラレールの青いラインと俊徳丸伝説をモチーフにしたドローイングや映像、音などが織り成す作品空間を作り上げており、「本の挿絵とテキストを空間にぶちまけるみたいなことを最近やっている。文章は流れていくので内容を追っていけないが、プロジェクターの映像が体に当たるので体で感じてもらえたら」と中野さん。文章は説経節や落語から抜き取ったものを使い、音は俊徳道を歩いてフィールドレコーディングした音源を基に作ったという。「プラレールと俊徳丸の話はギャップがあると思うが、プラレールの道と俊徳道の道がつながっている」と話す。

 2階吹き抜けに展示する作品「巨大な少年の建造計画」は、2013(平成25)年に銀座メゾンエルメス(東京都中央区)のギャラリーで個展を開いた際に制作した作品。「ガラスブロックが積み上がったかっこいいビルで、ブルーノ・タウトが生駒山上に都市の冠を作りたいという構想を持っていたので作品のアイデアに使いたいと思った。生駒山が冠で、それをかぶる東大阪の人間がいるなら俊徳丸しかいないと作品の構想に使った」と話す。第3展示室には、設計図や資料などを展示する。

 中野さんは「基本的には遊んでいるだけ。プラレールで遊んでいた時代もあり、今も俊徳丸伝説で遊んでいるだけなので、まずは一緒に遊んでもらえれば。そして、こういう地域で俊徳丸伝説が生まれたと知ってもらいたい」と話す。

 開館時間は10時〜17時(5月2日は20時まで)。5月7日休館。観覧無料。今月12日まで。