日本自動車車体整備協同組合連合会(会長 小倉龍一)は2024年5月23日(木)、記者会見を開催、5月21日(火)付けで損害保険大手4社に対して「指数対応単価」見直しをともなう団体協約締結を求めた交渉を申し入れたことを明らかにしました。

自動車車体整備士とは、ボディ補修全般のプロフェッショナル

自動車が事故を起こした時、可能な限り元どおりに戻してくれるプロフェッショナルが「自動車車体整備士」たち。日本自動車車体整備協同組合連合会(以下「日車協連」)日車協連は、国内の自動車車体整備に関わる42の会員事業者と4000名超の組合員を有する連合会です。

「自動車車体整備」業は、板金・塗装を含め事故車のボディにつき復元再生を総合的に扱うサービスの総称です。専門的な知識・技能を持つ「自動車車体整備士」によって、点検・修理・整備を行います。

パワートレーンに代表される「中身」の点検、整備、修理を行う「自動車整備士」に似ているようでいて作業領域はだいぶ異なりますが、自動車車体整備士もまた、国家資格のひとつです。

ゆがんだり破損してしまったフレーム、ボディを適切に補修するためには、さまざまな知識と豊富な経験値が必要不可欠。適切な補修によって、事故を起こしたクルマでも安全に走行することが可能になります。

また多くの事業者は車体整備士と自動車整備士の両方の資格を有し、自動車の内外全般のトータルケアを行っています。そういう意味で日車協連は、「健全な車体を可能な限り取り戻してくれる専門家の集団」とも言えるでしょう。

1983年に設立されて以来、技術者としての技能向上とともに、事業者としてのコンプライアンスを高める活動、健全な経営を行うための情報提供など、協同組合としてのさまざまな活動、サポートを行ってきました。

労務環境の整備などに活用し、深刻な人手不足解消を目指す

今回、日車協連が団体協約締結を求める交渉を申し入れることになった背景には、近年、社会問題となっている自動車整備業の担い手不足といった問題があります。解消にはやはり、労働環境の整備、賃金条件の改善が必要ですが、その原資としての作業工賃の見直しが求められています。

とくに事故との関連性が強い自動車車体整備においては、損害保険会社からの工賃=保険金が収入の大きな割合を占めているといいます。その計算は作業時間として使われる「指数」に、損害保険会社が設定する指数対応単価を乗ずることで決定されます。

日車協連はこの指数対応単価を、令和6年3月31日時点のものから17.5%以上引き上げることを目標として設定しています。根拠となるのは、国内における企業が事業活動を行う際にかかるコストに基づいた国内企業物価指数の大幅な上昇です。

全般では、2020年度比で2022年には19.3%も上昇。車体整備事業においては、原油価格の高騰、円安の進展による原材料費・エネルギーコストが上昇しています。17.5%以上の引き上げという目標は、労務費の適正な向上を図るとともに、そうした負担の応分を価格に転嫁することを求めるものでもあります。

日車協連によれば、指数対応単価をめぐる損害保険会社との交渉は、協同組合としてはほぼ30年にわたって行われなかったそうです。今回の申し入れは、「中小企業等協同組合法」に定められた団体協約制度を活用することで、変化する事業環境に即しながら、事業者にとって適正な取引条件を導き出すための第一歩となります。

これはおそらく、単に事業者だけの問題ではありません。

自動車車体整備というサービスの停滞は、自動車の安全性、日常的な安心感が失われてしまうことを意味します。普段はあまり意識していなかった「愛車の健康」を守るためにも、一般自動車ユーザーもまた「担い手」たちの貢献について改めて考えるとともに、今回の申し入れの動向について注視していくべきなのかもしれません。(文:Webモーターマガジン編集部)