平安時代に実在した“最強の呪術師”安倍晴明の活躍を描き、シリーズ累計発行部数680万部を突破した夢枕獏の「陰陽師」シリーズ。それを原作に、安倍晴明が陰陽師になる前の知られざる学生時代を完全オリジナルストーリーとして描きだす『陰陽師0』が4月19日(金)より公開。このたび本作から、全国のゆかりの地をめぐるツアーキャンペーンの活動レポートと、3枚の場面写真が到着した。

「アンフェア」シリーズの佐藤嗣麻子監督がメガホンをとり、若き安倍晴明役を『ゴールデンカムイ』(公開中)での熱演も記憶に新しい山崎賢人が演じる本作。呪いや祟りから都を守る陰陽師の学校であり省庁“陰陽寮”が政治の中心だった平安時代。呪術の天才と呼ばれる若き安倍晴明は、陰陽師になる意欲や興味がまったくない人嫌いの変わり者。ある日、貴族の源博雅(染谷将太)から皇族の徽子女王(奈緒)を襲う怪奇現象の解決を頼まれた晴明。しかしある学生の変死をきっかけに、平安京をも巻き込む凶悪な陰謀と呪いが動きだし…。

■奥州、裾野、そして徽子女王ゆかりの明和を監督&原作者がめぐる!

佐藤監督と原作者の夢枕獏が全国をめぐるツアーキャンペーンは、3月14日の岩手県奥州市を皮切りに、3月19日に静岡県裾野市、3月25日に三重県明和市の計3か所で開催された。まず奥州市のロケ誘致30周年と、本作でもロケ地となった歴史公園えさし藤原の郷の開園30周年を記念して開催された特別試写会では、奥州市出身である佐藤監督が本作の制作秘話を告白。

「獏さんの小説の晴明たちは40代ぐらいの設定ですが、今回は晴明が27で博雅が30歳ぐらい。なぜそこにしたかというと、自分が出会いを見てみたいというのももちろんありましたし、40代の晴明の話はいろんな分野で、獏さんが種をまいてすべて刈り取られてるなと思っています。なので少し目線を新しくして、若い2人にしたいなという想いがありました」。

それを受けて夢枕は「良い映画だといいなと思って観たのですが、良い映画だったんです。ちゃんと青春映画としてよくできていたし、魔法とか呪術っていうと、これでもかっていうくらい色々なことやってしまいがちですけど、ちゃんとルールがあって、そこから超えないようにしながら、しかも派手な画をしっかり作っているんです」と、本作のクオリティの高さを力説。

続いて、同じく本作のロケ地となった裾野市で行われた先行上映会&トークショーは、上映終了後のイベントとあって来場者からの質問コーナーが設けられ、夢枕への「好きな時代は?」という質問に対し、すかさず佐藤監督が「獏さんは日本の時代より中国の時代の方が興味ありますよね」と答える一幕も。

また、裾野市での撮影時のエピソードとして「夏のような陽射しの強い暑さのなか、差し入れのいちごおりといちごのスムージがとてもおいしかった」と佐藤監督が振り返ったり、裾野市のマスコットキャラクターである“すそのん”と記念撮影を行なうなど、終始ほっこりとしたリラックスムードに包まれていた。

■徽子女王と帝、博雅が三角関係に!?

三重県明和町の109シネマズ明和で行われた特別試写会のトークショーでは、夢枕が本編を観て涙を流していたことが佐藤監督の口から明らかに。

「2か所あるんですけれども、ひとつはちょっとやんちゃで生意気な晴明が、博雅を庇うんです。もうひとつは博雅が自分の脳内に閉じ込められてしまってどうしようもなくなった時に、晴明が『俺を信じろ』っていうところです。あれは“アイラブユー”と同じ意味です。俺たちの間はもうそこまでの仲だろうという意味ですよね」と、原作者自ら晴明と博雅の絆に心打たれた様子。

また、イベントが行われた明和町は劇中に登場する徽子女王のゆかりの地。様々な斎王がいたなかでなぜ徽子女王をヒロインに選んだのかと訊かれた佐藤監督は「歴史上、村上天皇の10人くらいいらっしゃる奥さんのひとりになる方。そして博雅といとこ同士にもあたるので、ここで三角関係が作れるなっていうふうに思ったのが最初です。また、斎宮に行くということは両親から切り離され、捨てられたと思って生きていたということもベースにあります。こうした基礎知識があると、より感動すると思います」と説明。

ツアーキャンペーンを兼ねて様々な博物館やスポットを巡ったという2人。そのなかで徽子女王を感じた場所について訊かれると、夢枕は竹神社の森を挙げ「昔ながらの感じが残っていて、空気感はちょっと一味違ったかなという気がします」とうっとり。「いろんなところに取材に行くのですが、知識は本とか色々なことで手に入るけど、やっぱり現場に行ってその現場の空気を吸うってことが一番書く時にインスパイアされますね」とコメントした。

そして今回、キャンペーンレポートとあわせて解禁された3枚の場面写真には、明和町でのトークで話題にあがった徽子女王が雅に琴のしらべを奏でる姿と、意識を失った徽子女王を抱き寄せる博雅の姿、そして博雅と板垣李光人演じる帝が向き合って座る様子がそれぞれ切り取られている。これまで様々なコンテンツで描かれてきた“陰陽師”の物語に、新たな息吹をもたらす本作。夢枕も絶賛するその出来栄えを、是非とも劇場で目撃してほしい。


文/久保田 和馬

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