『永遠の片思い』(02)や『無垢なる証人』(19)のイ・ハン監督と、韓国国内で大ヒットを記録した『エクストリーム・ジョブ』(19)でメガホンをとった脚本家のイ・ビョンホンがタッグを組んだ『マイ・スイート・ハニー』が5月3日(金・祝)より公開。本作でロマコメ映画に初めて挑戦した国民的俳優ユ・ヘジンと、“視聴率の女王”と称されるキム・ヒソンが初共演の感想と本作の魅力について語ってくれた。

本作は、仕事中毒の製菓会社研究員のチャ・チホ(ユ・ヘジン)と、明るくポジティブなシングルマザーのイ・イルヨン(キム・ヒソン)、共に40代の2人が出会い、初めて恋を知る姿を初々しく描く物語。ひょんなきっかけで出会い、“食べ友”として何度か食事やドライブを重ねるうちに惹かれ合っていくチホとイルヨン。チホは初めて経験する胸の高鳴りに戸惑い、仕事がまったく手につかなくなる。そんななか、チホの上司やイルヨンの娘など2人を取り巻く周囲の人々がさまざまな騒動を起こしていく。

■「キム・ヒソンさんの明るいエネルギーに、いい影響を受けました」(ユ・ヘジン)

――本作の出演オファーを受けた時のお気持ちと、脚本を読んだ時の感想からお聞かせください。

ユ・ヘジン「『ワンドゥギ』という作品を観て以来、イ・ハン監督の作品にはずっと関心がありました。本作の脚本を受け取り、興味深く読みました。傷を抱えた男女のロマンスがどう描かれるのか気になり、穏やかな微笑みを浮かべるような物語が心に染みたんだと思います」

キム・ヒソン「私は脚本を読んでキャラクターの魅力にハマりました。イルヨンは愛らしくて魅力的。しかもずっと憧れだったヘジンさんと共演できるということにとてもワクワクしました。ですが、映画に出演するということに対して不安があったので、長く悩み、一度お断りをしたんです」

――それでも出演を決意したきっかけはなんだったのでしょうか?

キム・ヒソン「ハン監督から手紙をいただいたんです。そこには私がイルヨンを演じなければならない理由がびっしり書いてあって、『食堂の扉を開けて入ってくるヒソンさんの姿がイルヨンそのものだった』という言葉がとても記憶に残っています。まだ私自身に心の準備ができていない気もしましたが、ここまで必要としてくださる監督がいるのに断るなんてと思って、すぐに電話をかけました」

―お2人は本作が初共演となりましたが、撮影現場での相性はいかがでしたか?

ユ・ヘジン「愛についての物語ですので、やはり相手の俳優さんとの相性がとても重要でした。ヒソンさんがすばらしい方だという話は以前から聞いていましたが、実際に現場で会ってみると想像以上で。周りの人たちみんなを居心地良くしてくれましたね。だからスタッフもみんな、ミーアキャットみたいにキム・ヒソンさんを待っていました(笑)」

キム・ヒソン「撮影が始まってすぐのころに、ヘジンさんが自分の出番じゃないのに自転車で現場に来てくれたことがすごく印象に残ってます。私の最初の撮影日だから、本当に私が来たのか気になって汗だくになりながら(笑)。明るい性格が私とすごく合っていて、一緒に撮影する時もまるで何作も共演してきた人のように息ぴったりでとても楽しかったです」

ユ・ヘジン「ヒソンさんの明るいエネルギーのおかげで、私もいい影響をたくさん受けた気がします」

■「撮影中は笑いを堪えるのに必死でした」(キム・ヒソン)

――ユ・ヘジンさんは今回が初めてのロマコメ作品でもありましたね。

ユ・ヘジン「そうです。しかも私が演じたチホは、現実感覚がなく社会性も不足しているけど、イルヨンが好きになるに値するキャラクターでなければいけないため、バランスがとても難しかったです。チホが恋に落ちて、ときめきと痛みを人生で初めて感じる。その感情に対してどうやって反応していくのかを考えていくうちに、自然とキャラクターができてきたように思います」

――キム・ヒソンさんはイルヨンという役柄にどのようにアプローチされていきましたか?

キム・ヒソン「イルヨンは基本的に私と似て前向きなんです。それに私もイルヨンと同じぐらいの歳の子どもを育てています。なので1人で子どもを育てている状況であればどうするのか、娘が私の好きな男性を嫌ったらどうするかなど、イルヨンの立場に立って考えることで、キャラクターにアプローチできました」

――劇中には笑えるシーンやほろりと感動できるシーンがたくさん織り交ぜられています。お2人がお気に入りのシーンを、撮影時のエピソードも含めて教えてください。

キム・ヒソン「すべての場面がおもしろいのでとても悩むのですが、ドライブインシアターの場面ですかね。私の方から積極的にスキンシップを取らなければいけなくて、顔が近付くたびにヘジンさんが噴き出して何度もNGになりました。それにキスの最中にヘジンさんが『やめてください』ってむにゃむにゃと言うのですが、おかしすぎて笑いを堪えるのに必死でした(笑)」

ユ・ヘジン「私はイルヨンとチホが別れる場面です。人波のなかにイルヨンが消えていくのを見つめると脚本には書かれていたのですが、チホになってみるとただ眺めているだけでは収まらずに座り込みました。純粋な愛を感じた場面で、モニターをみながら監督と私たち3人で涙を流したことをよく覚えています」

――最後に、日本の観客に向けて本作の魅力を教えてください!

キム・ヒソン「私は、子どもと一緒に安心して観られるような映画に出たいとずっと思っていました。ハン監督が演出したからか、おもしろいだけでなく温かさで包まれたロマンティックコメディ映画になっています」

ユ・ヘジン「本当に純粋な愛の物語を描いた作品ですので、日本の観客の皆さんが観ても共感できるはずです。これがこの作品の最大の魅力だと思っています」

構成・文/久保田 和馬