インテックス大阪にて5月3日〜5日まで開催されたポップ・カルチャーの祭典「大阪コミックコンベンション 2024」(略称:大阪コミコン2024)。今年も大きな盛り上がりを見せた本イベントの最終日、5月5日のメインステージで「大阪コミコン×MOVIE WALKER PRESS HORROR 大阪“怖(こわ)”コン」が2部構成で行われ、第1部では2024年注目の最新ホラー映画が紹介された。

アメコミキャラ系映画ライターの杉山すぴ豊による紹介で、ホラータレントとしても活躍している声優の野水伊織、「呪怨」シリーズや『犬鳴村』(20)などで知られるジャパニーズホラーの名手、清水崇監督、文筆家・映画評論家の氏家譲寿(ナマニク)、「DVD&動画配信でーた」編集長の西川亮らホラー映画を愛する者たちが次々とステージに登壇した。

最近観たホラー映画の話題では、西川が『オーメン:ザ・ファースト』(公開中)をピックアップ。ステージ上のスクリーンに予告映像が流されると、ナマニクが「意地でもダミアンを産んでやろうという…」と本作で描かれる“悪魔の子”ダミアン誕生について触れると、野水も「産んでやる!の部分がけっこうエグいし、怖い」と同意。清水監督は「自分の作品の撮影期間中でしたが、どうしても観たくて撮休に無理やり観に行きました(笑)。二転三転がけっこうあってよくできていた」とお気に入りの作品であることを明かした。

2024年公開の主なホラー映画リストが映しだされると、まず登壇者たちの目を引いたのは『CIVIL WAR(原題)』(10月4日公開)。北米興収でも好調なA24によるディストピアアクションで、西川が「ホラーと言っていいのか微妙なところですが、以前清水監督が(2022年の)ベスト1にも挙げていた『MEN 同じ顔の男たち』を手掛けたアレックス・ガーランドの最新作です」と説明する。ほかにも、野水はベトナム発のカニバリズムを題材にした映画『Kfc(原題)』(16)に注目し、「よく(日本での)公開が決まりましたね」と驚いていた。

本題の注目ホラー4本の1本目は、イシャナ・ナイト・シャマランが監督を務めた『ザ・ウォッチャーズ』(6月21日公開)。ガラス張りの部屋に閉じ込められた男女が、“謎のなにか”に監視される恐怖を描いた作品だ。

西川が「名前を聞いてピンとくる方も多いと思いますが、M.ナイト・シャマランの娘さんですね」と紹介すると、ナマニクが「”シャマラン”というと、結末で観客をビックリさせないといけないと思われていてかわいそう…」と反応し、野水も「どんでん返しなかったじゃん!って言われちゃう」と続く。さらに、「それが尾を引いて、娘さんもどんでん返しを期待されている」と清水監督がシャマラン親子の宿命について言及した。

その一方で、野水が「私は『ヴィレッジ』が一番好きなのですが、あの雰囲気にも(『ザ・ウォッチャーズ』は)似ているんですよね」とコメント。これを聞いた清水監督も「仕掛けだけじゃなくて、(M.ナイト・シャマランは)ちゃんと人のお芝居も撮れるんですよ」と俳優の演技も見どころだと説明していた。イシャナが父からどのような才能を受け継いだのか…劇場公開に期待が膨らむ。

2本目は“音”に反応し襲ってくる謎の生命体の恐怖を描いた大ヒットシリーズの第3作『クワイエット・プレイス:DAY 1』(6月28日公開)。第1作、2作では田舎や郊外の集落など小規模なコミュニティが舞台になっていたが、本作の予告映像では、突然謎の生命体に襲われる大都会の惨劇が映しだされた。

その大迫力のシーンを観たナマニクが開口一番に、「第2作でやってほしかった内容ではありますね」と述べると、清水監督は「シリーズを重ねるごとに予算が増えていったパターンですよね。あとになるほど豪華になった」と分析。野水は「憎いのは猫を抱いていること。絶対鳴き声上げちゃうし、猫ちゃん生きて!という気持ちになる」と主要人物らしき女性と一緒に映っていた猫について指摘する。これに対して、西川が「聞いたところによると、この猫はけっこう物語のキーポイントになるそうですよ」と補足していた。

3本目は『エイリアン:ロムルス』(9月6日公開)。巨匠リドリー・スコットによって生みだされた「エイリアン」シリーズの最新作で、『ドント・ブリーズ』(16)を手掛けたフェデ・アルバレスが監督を務める。密室の宇宙船内で謎の肉食生命体に襲われる乗組員の恐怖を描いた予告映像はシリーズ第1作に近いものを感じさせる。

映像からも伝わって来る巧みな恐怖演出にナマニクが「フェデ・アルバレスはこういう作品を撮るのがうまいですよね」と称賛。西川も「そうですね。アルバレスは2013年のリメイク版『死霊のはらわた』も撮っていて、画面を大量の血のりで真っ赤にしていました。今回もグロいシーンがいっぱい見られるのかな?」と期待を寄せる。

さらに、「『エイリアン』シリーズって必ず女性が活躍しますよね」と話すのは清水監督。するとすかさず、野水が「今回はケイリー・スピーニーさんという方がメインみたいです。この間、日本でも公開になった主演作の『プリシラ』でエルヴィス・プレスリーの恋人を演じていますよ」と続く。新進俳優が最旬のホラー監督、アルバレスとどのようなコラボを見せるのか?ホラーファンとしては気になるところだ。

最後に紹介されたのは『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』(公開日未定)。新たな時代のホラー映画作家の発掘、支援を目的とする「日本ホラー映画大賞」の第2回大賞受賞作品を商業映画化した作品だ。

本作について清水監督は、「僕も選考委員を務めさせていただいたのですが、近藤亮太監督は商業作品にするならこれでいきたい』と短編の『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』で応募したそうです。今回は僕も総合プロデューサーという形で関わっています」と説明。野水も「近藤監督はオムニバス短編集『百奇夜噺』の『鬼の呼び声』というエピソードを担当されているのですが、おじいちゃん家に行ったら怖い目に遭うというお話で演出がすごく怖かったです」とその実力を保証する。

本作では失踪した男の子を収めたVHSテープを巡るストーリーが展開されるようで、山林や廃屋が登場するドキュメンタリータッチな構成、ざらざらとした質感を予告映像からも感じ取ることができる。ステージ上でも「すごい重低音…」や「ずっと不気味」、「湿気がハンパない」といった感想が飛び交っていた。

最後はホラーキャラクターに扮したコスプレイヤーたちもステージに上がり、ブギーマンことマイケル・マイヤーズ、「サイレントヒル」シリーズのモンスター、ミーガンとチャッキーも勢揃いするシュールな光景のなかでフォトセッションが行われた。これからのサマーシーズン、ホラー映画が観たくなった際にはぜひ今回紹介された作品もチェックしてみてほしい。

取材・文/平尾嘉浩