物流の“2024年問題”の話題です。トラック運転手などの時間外労働の規制が始まって1カ月がたちました。運転手の働き方改革として施行された規制の強化で、4月から年間の上限が960時間となり、運転手の労働環境が改善された一方で人手不足は深刻化し、必要な物資や商品が運べなくなることが懸念されています。こうした課題解決へいち早く取り組んできた運送会社を取材しました。

千代田区に本社を構える運送会社「カンダコーポレーション」は全国に営業所を構え、グループ全体でドライバー892人が働いています。全国を走る車両の状況を可視化することで適切な運行を指示し、長時間の勤務にならないよう対策を取っているといいます。カンダコーポレーションの樋田一成取締役は「物が運べなくなる=物流会社としては売り上げが減ってしまう=利益も減ってしまうので、どのように対応していくか、システムに関しては早くから社内で話し合って導入を進めていた」と語ります。

実際に荷物を運搬する物流センターではさらなる対応が行われています。始業時間と終業時間、そして残業時間が一目で分かるシステムは“2024年問題”を見据えて2018年に導入されました。全国で24時間体制で働くドライバーの労働時間を細かく管理することで、翌日以降の運行予定の調整を行います。

こちらの会社では、システムの活用によって時間外労働を減らした上で、システム導入前の配送量を担保できているということです。樋田取締役は「システムとしてはうまくいっていると思う。数字をどう管理していくかが問題になってくると思うので、管理職はもちろんのこと従業員もそれを認識して、お互いで時間短縮に努めている」と話しています。

<2024年問題 「物流業界」存続の鍵は運賃アップ>

4月から始まった時間外労働の規制について、現役ドライバーからはさまざまな声が上がっています。ベテランドライバーからは「残業代が減るのは困る。もっと稼ぎたい」といった声が、一方、若手のドライバーからは「休みが確保されてよかった。土日はしっかり休みたい」と、世代によっても意見は分かれているようです。

また、物流業界の根本的な解決として重要になっていくのが「運賃の底上げ」です。東京都トラック協会の原島藤壽副会長は「2024年問題という言葉が出て、荷主側が運賃アップに耳を傾けてくれるようになった現状もあり、今後は国の定めた『標準的な運賃』となるよう運賃の底上げを図っていく必要がある」と話しています。2024年問題をきっかけとして物流業界全体、そして私たちも意識の変化が求められています。