動画配信サービス「ネットフリックス」で、米国の長崎、広島への原爆投下などを扱った米制作のドキュメンタリー「ターニング・ポイント 核兵器と冷戦」(ブライアン・ナッペンバーガー監督、全9話)が公開されている。2年前の日本での撮影にアシスタントとして携わった、福岡県大牟田市出身で早稲田大社会科学部4年の古賀野々華さん(23)に話を聞いた。
 古賀さんは第2次世界大戦下の米原爆開発計画「マンハッタン計画」や、原爆投下をテーマにした第1話を中心に日本での取材をサポート。機材運搬やスケジュール管理などを担当した。1話には、広島原爆の被爆者が体験を語るシーンがある。
 古賀さんは2022年夏に同大であった講演で、卒業生でドキュメンタリー監督の大矢英代さんから撮影予定を聞き、「見学したい」と直訴。作品の共同プロデューサーでもある大矢さんは「それならば」とアシスタント参加を打診した。
 広島の被爆者の取材は、同年8月6日の「広島原爆の日」の式典前後に敢行。古賀さんは「被爆者の体験を語る思いからすごくエネルギーを感じた」と振り返る。ロシアのウクライナ侵攻などを踏まえ、被爆者が「自分たちの頑張りにもかかわらず、世界が悪い方向に進んでいることに悶々(もんもん)としている」と話したことが印象的だったと言う。
 高校時代は、核産業で発展した米西部ワシントン州リッチランドに留学。留学先の高校は、原爆のきのこ雲がロゴマークだった。生徒らにも親しまれていたが、問題意識を持ち「きのこ雲の下にいたのは兵士ではなく市民だった」とロゴに異を唱える動画を発信した。
 作品は米の原爆開発から東西冷戦、ウクライナ侵攻を巡る核戦争の脅威などを壮大なスケールで描く。古賀さんは「原爆投下にとどまらず、歴史の大きな枠組みの中で、世界での日本の立ち位置や、他国の動きを捉えることができる作品になっている」と話す。
 配信直後はネットフリックスの全米視聴ランキングで上位に入った。米国では、連邦議員や政府高官から原爆投下を正当化する発言が相次ぐ。古賀さんは「原爆投下の非人道性について、米国のみならず世界中の人がいま一度考えるきっかけになれば」と願う。