日本全体でIT関連の専門人材が不足しており、2030年には約79万人の不足が見込まれています。長崎県でもIT人材不足が問題視されており、県内で200人程度の不足が予測されています。
そうしたなか《バングラデシュのIT技術者》への評価が高まっており、宮崎の成功を受け、長崎県内企業では積極採用する取り組みが進んでいます。

【住吉光アナウンサー(以下:住)】長崎の暮らし経済ウイークリーオピニオン今週も平家達史NBC論説委員(以下:平)とお伝えします。

NBC

【平】よろしくお願いします。今回のテーマは「外国人IT人材」です。

【住】日本全国の企業でIT関連の専門的な人材が不足し、深刻な問題になっているそうですね。

NBC

【平】今後ますますデジタル化が進む中、日本は《IT人材》が不足していると言われています。経済産業省の調査によると、2030年には最大で約79万人が不足する見込みです。

NBC

また、日本情報システム・ユーザー協会が先日公表した企業IT動向調査において、「IT部門要員全体として人員が不足している」と回答した企業の割合は81.5%と、かなり高くなっています。ITにおいては企画面でも実行面でも人材確保に課題があります。

今後5年程度で少なくとも200人程度不足

【住】長崎県においても、やはりIT人材は不足しているんでしょうか?

NBC

長崎県産業労働部 未来人材課 末續友基課長:
「長崎県も構造的に人材を確保するのが難しい時代になってきました。そういった中で(最先端の技術を持つ)IT人材というのが特に不足していると言われておりまして、今後5年程度で、少なくとも(県内で)200人程度の不足があるだろうという風に見込んでおります」

【住】IT人材の不足に対して、県内企業はどのような対策を考えているのでしょうか?
【平】長崎経済研究所と長崎商工会議所の調査によると、割合としては低いですが、8.3%の県内企業が人材の確保や定着のために「外国人の積極採用」を最優先で取り組む対策として挙げています。こうした中、長崎県は、IT人材のニーズに対応するため、バングラデシュからの人材確保モデルを構築しようとしています。

バングラデシュからのIT人材が注目される理由

NBC

【平】実は、バングラデシュは能力の高いIT技術者が多いのです。オックスフォード大学インターネット研究所の調査では、「オンライン作業者の外注において人材供給量が最も多い」のは《インド》で、それに次ぐ2位が《バングラデシュ》となっているんです。バングラデシュのIT人材は、日本以外でも先進国を中心に活躍しているんです。

NBC

JICAバングラデシュ事務所 市口知英所長:
「世界的にもトップレベルな方々がいらっしゃいます。アメリカのグーグルやマイクロソフトで働いている方もいますし、相当なレベルの方が今バングラデシュの人材として活躍してます」

NBC

バングラデシュのIT人材に興味がある長崎県内企業などが参加するセミナーが、先月開催されました。

市口所長:
「日本が最大のODA(政府開発援助)の協力国になったということもあって《有数の親日国》という風に言ってもいいかなと思います」

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バングラデシュの若くて優秀なIT技術者が日本語や日本のビジネスマナーなどを学び、長崎県内の企業に就職して県内の人材不足を救うことが狙いです。バングラデシュIT人材の活用に関するセミナーには、採用に興味がある県内19社が参加しました。

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システム開発企業 担当者:
「大体いい人は東京に行くもんですから、そういう中でやはり今回バングラデシュという外国の方が採用できるチャンスがあるのであればお話を聞きたいなということで参加しました」

NBC

システム開発企業 担当者:
「私どもは基本的には開発が中心の会社ですので、開発のところでパワーを発揮していただければというのが一つと、今後に関してはAIなどの分野で技術習得をしていただければなと言う風に思っています」

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測量・設計企業 担当者:
「業務の一環としてIT技術が必要になって来ている。そういう時代がやって来ていると感じています」

NBC

【住】IT人材をバングラデシュから呼び込む取り組みは、実は宮崎で先行して行われているんですよね。

【平】今回のセミナーには国際協力機構=JICAのバングラデシュ事務所や宮崎大学などが招かれ、これまでの成果などを説明しました。

《留学生を受け入れ県内企業へ》宮崎モデルとは

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宮崎大学 伊藤健一准教授:
「JICAさんの事業と合わせて我々の方でもやらせていただいた2017年から2020年の間に186名が日本に来られていて、3分の1は宮崎に来てもらっています。また2021年以降につきましても55名が日本に就職して、そのうち22名が宮崎の方に就職してくださっていると」

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宮崎モデルとは、バングラデシュで優秀な若手IT人材に日本語などを教育し、その後、宮崎大学が留学生として受け入れ、教育やインターンシップを行い、宮崎をはじめ国内企業に就職するシステムです。今年も宮崎大学に留学するIT技術者たちが宮崎市役所を訪ねました。

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今年、宮崎に来たバングラデシュIT技術者:
「日本で技術を学んでいいソフトウェアエンジニアになるよう頑張りたい」

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「私たちは日本のシステムや人々、場所はとても好き」

既に受け入れを行っている宮崎の企業「スカイコムR&Dセンター宮崎」の柴田信彦センター長は──

NBC

Q.バングラデシュから人材を採用して手応えは?
「かなり満足というか、期待以上に成果を出してくれています。個人個人も向上心が高いんですね。積極的に学んで我々にとって必要な知識をすぐ身に付けてくれて成果を出してくれていると」

【住】宮崎では7年前から取り組んでいるということなんですね。既に、人材不足を救っているということが分かりました。

地域の国際化への貢献と期待

【住】産学官連携について長崎県ではどのように構築されるのでしょうか。

NBC

【平】《長崎県モデル》でも、現地でIT人材を教育するところまでは宮崎の方式をそのまま取り入れます。その後、IT人材と県内企業とのマッチング会が現地で行われた後、長崎大学に留学します。就職する先が《県内企業に限定されている》のが宮崎モデルとの違いです。JICAと宮崎大学に、今回の長崎モデルに寄せる期待を聞きました。

NBC

JICAバングラデシュ事務所 市口知英所長:
「今回、長崎はかなり力を入れてやっていると。宮崎モデルの重要なところは《産官学がタッグを組んでやっている》という事があって。他の地域はなかなかそこまで行っていなくて、長崎はそれに近いような形が出来るかなと思ってます。宮崎を超えるような成果も上がるんじゃないかなと期待しています」

NBC

宮崎大学 伊藤健一准教授:
「当然、宮崎で行っていたことの中でお役立てできる事については、いろいろ情報提供含め協力させていただきますし、長崎という地は宮崎よりも国際面において歴史的にも非常に蓄積のある地域でいらっしゃいますから、長崎での展開で、我々も学ぶことが多いと思うので、お互いが良い効果《シナジー》を生めるような関係性を築いていきたいと思います」

【住】長崎もバングラデシュ「ノースサウス大学」でのマッチングが今年6月に予定されているそうですが、現地でのアピールが大事になりそうですね。

地元企業の成長と共生を促す取り組みへ

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【平】今回のスキーム(連携体制)をみると、県が《地元企業の開拓・マッチング》を、長崎大学が《日本語教育・インターンシップ》を、長崎市が《採用内定にかかる紹介手数料・受講料等の補助》それに《地域との交流支援》を行うほか、情報産業協会や商工会議所も協力する形になっています。

【住】仕事以外の分野で「地域の国際化」にも一役買いそうですね。

【平】現代では「多文化共生」は世界的潮流と言えますので、地域の人々がバングラデシュ人を理解することで、受け入れやすい、溶け込みやすい環境づくりに繋がると思います。宮崎においてはスムーズにいっているようです。

宮崎大学 伊藤健一准教授:
「地域において海外の方と働く事が割と一般的になってきた今、バングラデシュの方が地域の人たちに快く受け入れられているように見えるというところが非常にありがたいと思っています。こういう海外の人が入ることによって、会社がより成長しよう、刺激を受けて何かをしようという転換の機になればいいなと。それによって、彼ら及び日本人の若者も地方に定着するようになっていければいいと思っています」

NBC

【平】IT人材は《IT企業》だけでなく《どの業種》においても必要な人材です。ただ「IT人材」といっても──
・ITツールの保守運用・請負開発等を行う「従来型IT人材
・ITツールを戦略的にビジネスに活用する「高度IT人材
・AIやIoTなどの最先端技術をマスターしている「先端IT人材」といった種類がありますので、どの《IT人材》が自らの会社に必要なのか特定することから始める必要があります。
人手不足の中で、生産性を向上させるためには《ITの活用》は避けて通れませんので、外国人を活用するというのも一つの選択肢ではないでしょうか。

NBC

なお、長崎県では、今年度中に第2回の公募を行う予定です。興味のある方は、長崎県産業労働部未来人材課にご相談ください。