「岡山をリードする会社になるべきじゃないかと思い始めたのが株式上場のきっかけだ」。今年4月に東証グロース市場に上場したイタミアートの伊丹一晃社長はこう話す。同社は、のぼり旗や懸垂幕などセールスプロモーション(SP)商材を製販一体型で提供し、BtoB-ECサイトを全18サイト運営する。2024年1月期の売上高は、前期比24.2%増の31億1200万円と大きく増収した。「M&Aや海外展開も視野に入れている」との考えも本紙の取材で明かした。


<10年前から上場意識>
――株式上場後の今の心境は?

燃え尽き症候群とか自意識過剰などになってしまうのではないか、と思っていたが、上場の前後で心境は変わらない。もちろん、上場準備中の時は気持ちが高ぶっていた。

――上場はいつから考えていたか?

10年前から思い始めており、8年前から準備してきた。
 
理由はいくつかあるが、当社の地元である岡山県をリードする会社になるべきだと思い始めたのがきっかけだ。知人などからの刺激もあり、株式上場に挑戦しようと決めた。
 
――イタミアートが展開する事業のマーケットは?

当社の事業領域は、サイネージ市場になる。サイネージもハード分野や、当社が手掛けるのぼり旗や懸垂幕、デジタルサイネージなどを含むソフト分野がある。
 
今後の成長に向け、サイネージ市場だけでなく、ノベルティー市場やディスプレー分野への参入も視野に入れている。


<ターゲットは7000億円>

――これらの市場規模はどの程度か?

サイネージ市場は2000億円ほど。これから参入するノベルティー市場は3000億〜5000億円規模だ。これらを含めると当社の事業の市場規模は5000億〜7000億円となる。大きな市場にこれからリーチしていく。

――自社の強みとは?

販促マーケティングや商品の企画、開発、製造などを一気通貫で対応できることだ。物流周辺もローコスト運営で展開し、機械化を軸に効率化を図っている。
 
当社と事業が被るのは、広告代理店や市町村にある看板屋など。しかし、製造機能があることやECサイトの複数展開、サイト構築の自社開発、バックオフィスのシステム化など、システム関連には多額の投資をしている点が差別化ポイントだ。
 
EC化率は引き続き増えていくことが見込まれているため、当社にとっては大きなアドバンテージになると判断している。


<50%はリピートに>

――これまでの実績は?

取引先数は35万4000件。毎月、新規顧客が3000件程度増えている。
 
初めて当社を利用した顧客の50〜60%がリピート顧客になっている。大幅な成長ではなく、着実な成長を見込むことができる。
 
業績も好調に推移している。前期の売上高は31億円。22年は25億円で、21年は21億円だった。直近3年間を振り返ると着実な成長を続けている。

――顧客単価はどのくらいか?

平均1万2000円程度だ。 

――展開しているECサイト数は?

キングシリーズとして展開している15サイトを含めて全18サイト。それぞれのサイトでアイテムやブランドを変えて展開している。
 
一般的には各サイトに管理者を配置するケースが多いかもしれないが、当社ではマーケティングとデータ管理のチームがそれぞれ全サイトを一括で管理している。

――顧客ターゲットは?

メインは飲食店だ。個人店や数店舗運営するところなど幅広い。他にも、各地で開催されるイベントやブースの装飾、フェスなどがある。
 
細かいところで言えば、学校で生徒が大きな大会に出た時に出す大きな懸垂幕などの制作もターゲットとなっている。

――ECの成長はウェブ広告周辺のノウハウも必要だが。

当然、ウェブ広告などのノウハウもあるが、特に当社はSEO対策が強い。他社は広告のみで取ろうとしているところを当社はSEOを中心に顧客を獲得している。

定期的にGoogleのアルゴリズムが変更されたりするが、それでもほとんど影響を受けずに運営できている。
 
日々、システムの更新や改良を続け、それを何十年と積み上げてやってきていることも強みの1つだ。


<海外展開も意識>

――今後の成長戦略を聞きたい。

横展開しやすい新商品を定期的に出していく。M&Aも検討していくつもりだ。
 
実は海外展開も意識している。今後も円安傾向が続くのであれば、意識しないといけない。


【プロフィール】
1970年3月生まれ。岡山県出身。1990年に西日本法規出版に入社し、法人営業を担当する。その後独立を決意し、1999年2月に広告プロダクションを展開するイタミアートを設立した。