SCREENホールディングス(HD)は世界最高の毎秒1テラビット(テラは1兆、Tbps)クラスの高速光通信の実現につながる「補償光学用2次元光位相変調デバイス」を2026年までに開発する。宇宙と地球との光通信は大気の影響で光の波面が乱れる「大気ゆらぎ」が生じ、通信品質の低下につながっている。ひずんだ光波面を2次元に制御するデバイスの開発により、衛星光通信の高速化・大容量化に貢献する。

SCREENHDと国立天文台、情報通信研究機構(NICT)の3者が総務省の外部委託研究事業として取り組む。

天文学で効果が実証済みの「補償光学系」の技術を光通信に応用し、大気ゆらぎを克服するための研究が世界で盛んになっている。最先端は米航空宇宙局(NASA)が23年に達成した毎秒200ギガビット(ギガは10億、Gbps)の通信実験だ。一方、総務省は衛星光通信が社会実装される30年ごろにはTbpsクラスの大容量光通信が必要になるとみている。

SCREENHDは微小電気機械システム(MEMS)の一種である「1次元回折型光変調素子(GLV)」や光学技術のノウハウを生かし「2次元光位相変調素子(PLV)」を開発する。すでにGLVは半導体基板など向けの直接露光装置に利用されている。

PLVデバイスは波面の歪みを補正するミラーを用いる。独立したミラーを100×100配列で1万個並べる。各ミラーは100キロヘルツ以上の速度で制御できるようソフトウエアやシステムを開発し、細かく光波面の歪みを補正できるようにする。PLVは2層構造で、上面に鏡、下面に電極を配置。電圧の変化により鏡の高さが変わり、光波面の形状を制御する仕組み。

月や惑星を周回する衛星と地球の長距離光通信を想定し、1平方センチメートル当たり100ワットのハイパワーレーザーへの耐性を持つデバイスの開発を目指す。国立天文台やNICTは、光通信波面の補正アルゴリズムや評価システムの構築に知見を生かす。