反響の大きかった2023年の記事からジャンル別にトップ10を発表してきた。今回は集計の締切後に、実は大反響だった記事に注目。年間ランキングで忘れられがちな11月12月に公開した社会経済ニュース記事から選ばれた、第4位はこちら!(集計期間は2023年11月〜2024年1月。初公開2023年11月1日 記事は取材時の状況。ご注意ください) *  *  *

◆社長逮捕、脱税、汚職、そして倒産

 コロナ禍前の2019年12月、筆者の仕事場近くにある大手ホールの本社ビル前に報道陣が集まっていました。

 昼の「与党の国会議員が大手ホールと結託したカジノ汚職で逮捕」というニュースを見て、もしかしたらと思いつつ散歩がてらに向かってみたら予感的中。野次馬としてしばらく待っていると、捜査関係者の車が次々にビルの駐車場へ——。

 思えば東日本大震災直後の2011年5月、まさにパチンコ業界が大々的にバッシングされている最中に当時の社長が薬物関係で逮捕されたり、翌年の7月には脱税を指摘されたりと、なにかとお騒がせなホール企業であった「ガイア」。10月30日に民事再生法の適用を申請し、実質的に倒産しました。

◆とにかく出ない店として有名

 当時の社長が逮捕された数年前には全国に200店舗以上を展開、一時は業界第3位の店舗数を誇っており、紛れもなく大手として知られていた「ガイア」というホール。ただファンの間では、「とにかく出玉に期待できない店」として知られていました。

 そんなイメージがあるからか、新機種を積極的に導入していましたし、最新設備を導入していた店内も清掃が行き届いており、他の大手と比べても決して見劣りするものではなし。スタッフのオペレーションも今どきのホールらしいもので、遊技環境としては申し分ありません。

 しかし、どんなに汚いホールでも出玉面が期待できれば(それが実際は幻想であったとしても)客が集まるのが、この業界では定説。だからこそ震災前など、大手ホールは出玉が期待できるという特定日をイメージさせた広告を大量に出稿していましたし、今でも規制ギリギリの広告宣伝を続けているホールが少なくないのです。

◆高設定を使う場合は稟議が必要!?

 そんななか、ガイアといえば、あくまで筆者の所感ですけど、ただただ淡々と営業していたイメージでした。それでもそんなスタンスの優良店も少なくないだけに、試しにとパチンコを打ってみると、まあ回りません。パチスロでは、一般的には店長の判断で使えるはずの高設定は「本社の稟議が必要」とまで噂される始末で、実際にガイアと取り引きがあった業界関係者にその真偽を聞いてみたら、あながち噂だけではないとのこと。

◆出なくて客もいないのに出店が続く不思議

 結果、少なくとも筆者の知る限りのガイアはどこも驚くくらいにガラガラで、これで商売として成り立つのか心配してしまうレベルでした。しかし、それでも出店を続けており、パチンコ業界の7不思議とも言われるほど。業界関係者の話では、ガイアは店舗や土地といった資産を証券化してキャッシュを回しており、どんどん出店していく必要があると。いわば自転車操業経営を行っていたわけであります。

 200店舗達成以降も新店舗を積極的に出店し続け、社長逮捕以降から本格的に展開していた新屋号「メガガイア」は地方によってはちゃんと玉を出している、強い店として知られているという話も聞きました。

◆交換率が下がっても変わらぬ営業スタイル

パチンコ 2015年には都内ホールが脱等価ということで交換率を一斉に下げましたが、その際もパチンコがちょっとだけ回るようになって驚いた記憶もあります。ガラガラでこれくらい回ってくれれば筆者的に理想だなと思い、しばらく通っていたら、あっという間に元通り。交換率が下がったのに以前同様の回りになったら、「そりゃ客はいなくても粗利はしっかり確保できているんだな」と思わされた次第であります。

◆店舗の切り売りと不渡り

 その後、絶対的なファン人口が減り、さらにファン自体の可処分所得も減るなかで、出ないというイメージが付いてしまったホールはどんどん淘汰される時代が到来します。そのイメージの典型例であるガイアも徐々に店舗数を減らし、さらにそれなりに客が付いているメガガイアブランドのような店舗は他の法人に売却。

 とうとう自転車操業も終わるのかなと業界内でささやかれていたら、今回の民事再生に……。ちょっと前には手形が落ちなかったという話も流れ、取り引きがあったメーカーや業者は大変だったと思いますが、ガイアの倒産というニュースは誰も驚かなかったというのが正直なところではないでしょうか。

◆再建は厳しいという声も

パチンコ スポンサーの支援で営業を続けるという話もありますが、既にそれなりに客がいた店舗は売却済なだけに、再建は厳しいというのが関係者の声。ただ現金商売という強みもあって、かつて同様に民事再生を申請したホールは、今でもしぶとく営業を続けていたりします。

 少なくない社員が在籍し、その家族を含めればかなりの数の人がガイアで生活していることでしょう。また、業界的にも大手ホールの倒産はイメージの悪化を加速させ、さらなるファン離れにつながる恐れもあります。ガイアが再建できたとすればこの業界はまだ大丈夫かもしれませんが、どうなることか……。今後の動向からは目が離せそうもありません。

文/キム・ラモーン



【キム・ラモーン】
ライターとして25年のキャリアを持つパチンコ大好きライター。攻略誌だけでなく、業界紙や新聞、一般誌など幅広い分野で活躍する。