1ドル150円を超えて34年ぶりの円安水準となった為替相場。そんな波乱の市場で着実に利益をあげ続けている異色の市議会議員がいる。自身がFXトレーダーであることを公言している、埼玉県和光市議会議員の萩原圭一氏だ。
 投資顧問会社等に勤務した後、東京大学大学院に進学(中退)、フリーターという異色の経歴を経て、2019年、36歳のとき完全無所属で和光市議会議員に当選した萩原氏。現在2期目を務めているという本人を取材した。

◆あえて「トレーダー議員」と公表するワケ

――そもそもなんですが、議員がデイトレードをしても問題ないのでしょうか?

萩原圭一(以下、萩原):もちろん公務中はやりませんが、それ以外の時間であれば、特に制限はありません。たとえば会社経営や農業などと兼業している議員と同じですね。

――市民から理解は得られるのでしょうか?

萩原:私があえてトレーダーだと公言しているのは、トレーダーとして誇りをもっているからです。厳しい世界ですし、楽して稼いでいるわけではありません。私は政治も全力、投資も全力です。和光市のウェブサイトから過去の議事録や議会の映像などを見てもらえれば、議員としてきちんと仕事しているのがわかると思います。議会で問題提起するために、行政の勉強も欠かしません。

――それにしてもトレーダー議員というのは、かなり異色の政治家では。

萩原:そうですね。たとえば先祖代々の資産(株式)を引き継いでいる議員とか、投資信託をもっている程度の議員はいると思いますが、デイトレードで私より稼いでいる議員はおそらくいないでしょうね。

◆「レバレッジ」は最大10倍程度まで

――FXは株式投資よりもリスクが高い印象がありますが、なぜFXを選んだのですか?

萩原:為替は個別株などに比べて情報を得やすいし、投資先として一番効率がいいからです。FXは投資資金に対してレバレッジを最大25倍までかけられるのが、株式投資にはないメリットです。ただし25倍の取引はハイリスクすぎるので、私は高くても10倍程度までに抑えています。リスク管理は徹底していますし、デイトレードなら翌日に持ち越さないので、寝ている間に暴落でやられることもないです。

――どのようなトレードスタイルなのですか?

萩原:デイトレードというと、一日中、複数のモニターとにらめっこして売り買いを激しく繰り返すような姿を想像する人が多いと思いますが、私のトレードはかなりシンプルで、エントリーをしぼって1日1回取引するくらいですよ。5分足チャートの動きから大衆心理や機関投資家の行動を読み取って、30分間くらいポジションを持ちます。トレードで使うのはスマホ1台だけなので、どこにいても取引チャンスを逃しません。

◆スマホだけで毎月150万円以上の稼ぎ

――何かテクニカル指標を参考にしていますか?

萩原:テクニカル指標は使っていません。明確なシグナルが出るまでにタイムラグがあるし、私はトレンドを追っているわけではないからです。

――資産額やパフォーマンスについて聞いてもよいですか?

萩原:私は投資を始めてまだ5年くらいで、徐々に増やしてきているところなので、資産はまだ5000万円程度です。そのうち3000万円くらいをFXの証拠金として入れて運用しています。月利5%で150万円を月間利益の目安としていて、ほぼ毎月達成しています。月利5%で複利運用すると年利80%くらいになります。この高い利回りはデイトレードだからこそ実現できているのです。

◆今でも家賃5万円のアパートに住んでいる

――現在、34年ぶりの歴史的な円安水準にあります。そのあたりは意識していますか?

萩原:いや、水準が円安か円高かは私にはあまり関係ないですね。重要なのはチャートに動きがあるかどうかだけです。なので、「ドル円だけ」みたいな特定の通貨ペアへのこだわりもありません。

――トレードで勝つために、普段の生活などで大切にしていることはありますか?

萩原:体調は常に整えるようにしています。体調が悪いと判断力が落ちてしまうので。普段から酒は飲まないし、タバコも吸いません。規則正しい生活を心がけています。

――「いくらまで増やしたい」とか、目標はありますか?

萩原:正直、そういうことはあまり考えていませんね。私の日頃の生活はとても質素で、今でも家賃5万円のアパートに住んでいるし、車も持っていません。移動はもっぱら自転車で、食事も基本的に自炊です。あまり欲しいものもなくて、大きい買い物もしていないです。投資で稼いでいるのに、生活水準は同世代の普通以下かもしれませんね。ちなみに、選挙もわずか5万円ほどしか使っていません。選挙カーもなしで、公費負担(税金)も使っていません。私はお金のかからない政治を目指しているので。

◆トレードは修行だと思ってやっている

――そういうふうに無欲であることが相場で勝つ秘訣なのでしょうか?

萩原:そうですね。逆説的な話ですが、多くの人がもうかっていないのは、儲けようとしているからです。欲が出ると判断力が落ちてしまいます。もちろんトレードの目的は利益を出すことですが、私はトレードしている時の意識としては、事務的に淡々と処理して、感情は一切入れないようにしています。感情を入れてしまうと的確に利確や損切りができなくなるからです。私は悟りの境地というか、修行だと思ってやってますね(笑)。

――初心者が真似するには難しそうですね。

萩原:ただ単に手法を教えただけでは勝てないでしょう。特にデイトレードでは心技体が重要なので、技だけ追求してもダメで、心と体も伴っていなければなりません。相場が急変しても冷静さを保つメンタルの強さや、判断力、瞬発力、忍耐力、体力などがそろっていないと相場で戦えませんね。

――そうなると、投資初心者にアドバイスはありますか?

萩原:初心者が知識なしでトレードすると絶対に負けるので、勉強は必須です。投資で勝つには大きく分けて2通りあります。能力で勝つか、時間で勝つかです。FXは前者の世界であり、1割の勝者と9割の敗者で成り立つ弱肉強食のゼロサム・ゲームです。自分の戦略の希少価値や優位性、つまり他の投資家と比べて何が優れているか説明できるくらいでないと、カモになるだけですよ。

 また、後者の“時間で勝つ”世界の代表が株式です。投資信託などで世界全体に分散投資して、10〜20年という長期で持ち続ければ資産が増えていく見込みが非常に高いです。複利効果が働くので若ければ若いほど資産形成に有利です。能力で勝てる人はデイトレードをしたほうが圧倒的に効率が高いですが、そこまで労力をかけられない人や、手堅くいきたいという人は長期分散投資がおすすめです。

◆ 「円預金だけの人は危機感を」

萩原圭一――長期投資が良いとなると、やはりNISAがおすすめですか?

萩原:そうですね。投資の入口としてはいいと思います。2024年からNISA制度が拡充されて、「貯蓄から投資へ」の流れがあるので、有利な制度は利用したほうがいい。いま日本では、政治家が国民に「投資しなさい」と言っているのだから、私は政治家としてその見本になってやろうと考えています。国民にやれと言いながら、政治家が何もしないのはどうかと思いますし。まあ、NISAでFXはできませんけどね。

 あと、政治家の私が言うのもあれですが、急速に少子高齢化・人口減少が進んでいるので、確実に日本は沈んでいきます。なので、資産の半分は米ドルで持つとか、株式なら米国株や日本の大企業の株を持って海外事業からの収益を間接的に享受するとか、自己防衛・リスクヘッジが必要です。「銀行預金が一番安心」と考える人は多いですが、預貯金だけだと日本(円)にフルベットしている状態なので、それこそリスクですよ。

 アメリカ国民は資産の半分以上を株式・債券などで保有しているので、個人金融資産が日本より大きく伸びています。また、新興国の人たちは自国の通貨をあまり信用していなくて、預貯金は米ドルで保有するのが普通です。それくらいのたくましさが今後の日本人には必要かもしれませんね。

 投資を恐れずに一歩踏み出してください。それが未来につながりますから。

<取材・文/栗林篤>

【萩原圭一(はぎわらけいいち)】
トレーダー議員。1982年生まれ。投資顧問会社等に勤務し、2019年、36歳のとき埼玉県和光市議会議員に当選。現在2期目。トレーダー歴5年ながら、資産5000万円超。スマホだけで毎月150万円以上稼いでいる。X(旧Twitter):@hagi_k1



【栗林 篤】
不動産、マネー、ネットカルチャー分野を得意とするフリーライター。社会事情についても執筆する。著書に『サラリーマンのままで副業1000万円』(WAVE出版)。X(旧Twitter):@yuutaiooya