見た目とは正反対で、想像もつかないような行動をとる人は少なからずいるものです。例えば、ハイブランドに身を包んだ人が、閉店間際のスーパーで半額の惣菜を買うような感じでしょうか。今回は、ある新入社員による驚くべき行動のエピソードを取材しました。
◆女性社員がざわついたイケメン
話を聞いたのは、海外メーカーの住宅設備を扱う会社に就職した堀江さん(仮名・23歳)です。その年は、堀江さん以外に男女合わせて10名の新入社員が入社したそうです。
「コロナの影響で私たちは久々の新人でした。男性は、私を含めて4名だったのですが、その中にNくん(24歳)というモデルのような男性がいて、女性陣にいつも取り囲まれていましたね。
インターンの時から顔見知りだったA子さんが、聞いてもいないのにNくんの素性を話してくるんですよ。それも非常に嬉しそうな顔をして。でも僕、実はA子さんのことが結構タイプだったんで、嫉妬心で胸がいっぱいになりました」
女性陣にモテモテなNさん。どうやら、父親がイタリア系のアメリカ人で、母親が日本人だそうです。イケメンであることに加えて188センチの高身長、さらに家は豪邸だとか。
◆男性陣の間に飛び交った妙なうわさ
堀江さんのオフィスには、菓子メーカーが設置した「置き菓子サービス」があるそうです。コンビニなどよりも少し安価で、新入社員の間ではよく利用されていました。
「ある日、同期のBくんから妙なうわさを耳にしました。どうやら、Nくんがズルして、置き菓子サービスからお菓子を取っているようだと。近くにいたBくんによると、貯金箱に入れるときの小銭の音よりも、手に取るお菓子のほうが多かったそうです。それもかなりの頻度で」
あまりのモテモテぶりに、同期の男性陣から嫉妬されていたからなのか、Nさんへの監視が厳しかったようです。
「いつも自慢げに“金持ちアピール”をしていただけに、最初は何かの間違いかと思っていましたが、実は、彼の問題行動を私も目撃してしまいました」
◆スマホカメラがとらえた決定的瞬間
堀江さんは、Nさんのうわさを確かめるべく、あるプランを実行したそうです。
「彼の決定的瞬間を捉えるために、Nくんに早朝ミーティングがあると偽りました。最初は『え? なんで俺たち3人だけで?』と言われましたが、意外とあっさり納得してくれました。それで、僕たちは彼よりも早く出社し、まずは貯金箱の小銭を空にし、次に小銭の投入口が映るようにスマホをセッティングしたんです」
約束の時間にNさんが出社すると、堀江さんとBさんはコンビニへ行く振りをして、彼をオフィスで一人きりにさせました。
「うわさ通りの決定的瞬間が録画されていました。映像には、100円玉を1枚しか入れていないのに、お菓子を3品手に取る様子が映っていました。念のためにトイレから戻り貯金箱の中身も確認しましたが、100円玉1枚しか入っていませんでした」
◆悪びれないので、最後の手段に
堀江さんは、決定的な証拠をNさんに突きつけますが、全く悪びれる様子を見せなかったといいます。
「明らかに窃盗なので、面と向かって注意しました。でも、彼は全く悪びれる様子もなく、むしろ僕に『変な言いがかりはやめてくれ』と、文句をつけてきました。もうコイツには何を言っても無駄だと感じ、『これでもカッコいいと思う?』とA子に早朝の一部始終を話しました」
A子さんは、スマホの映像を見て眉間にシワを寄せながら「なにこれ! 最低じゃない?」と驚きを隠せない様子でした。そして、いつの間にか他の女性陣にもその事実が広まり、Nさんは周囲から避けられるようになったそうです。
「Nのやつ、女性陣から相手にされなくなったことがショックだったらしく、しばらく出社していましたが、会社に来なくなりました」
後日、上司から事情を尋ねられた堀江さんは、Nさんに関する一連の問題行動と、決定的瞬間の映像を提供したそうです。それからしばらくして、正式に退職が受理されたようです。
<TEXT/ベルクちゃん>
―[すぐに辞めた新入社員]―
【ベルクちゃん】
愛犬ベルクちゃんと暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営