【羽川豊の視点 Weekly Watch】

 167センチ、70キロ。日欧両ツアー共催「ISPSハンダ 欧州・日本どっちが勝つかトーナメント!」で優勝した桂川有人(25)は、日大時代から知っている選手ですが、昨今のプロゴルフ界では極めて小柄です。

 昨年は米下部のコーンフェリーツアーに参戦し16試合で予選通過は8回。ベストフィニッシュ13位と振るいませんでしたが、米国の予選会から全米オープンに出場(58位)したり、PGAツアー「ジョンディアクラシック」のマンデートーナメント(予選会)に挑戦。自分でバッグを担いで通過し、本戦で26位に入るなど、海外メジャーや憧れの米ツアーへつながるチャンスがあれば果敢に挑んできました。

 桂川は今回の優勝で、2026年まで欧州ツアーのシード権を手にしました。そこで年間ポイントランキング上位10人に入れば、久常涼のように米ツアーの出場権が得られます。

「昨年経験した数々の苦労が報われた」

 そう思う人もいるでしょうが、少し違う気がします。桂川は米下部ツアーなどで現地欧米選手との差やコースの違いなどを肌で感じ、筋力トレーニングの重要性に気がつき、オフは毎日ジムに通ったそうです。確かに昨年より腕が太くなり、飛距離は10ヤードも伸びて300ヤード超。今は用具がよくなり、プロなら最新機器で弾道の高さ、スピン量の調整も可能です。正しいトレーニングを行えば、飛距離で欧米選手に歯が立たないという時代ではありません。同時にショートゲームのレベルアップに努めたのは、現地での悔しい経験からでしょう。

 かつては欧米や豪州、アジアの国々から多くの選手がやってきた国内ツアーも、今季は史上最少の23試合。この先、さらに試合数は減るかもしれません。海外メジャーや米ツアーを目指す者は「外」へ目を向けなければならない時代です。

 久常のように予選会から欧州ツアーを経て米ツアー参戦を実現するか、米下部ツアーにチャレンジするのが、これからの日本選手のスタンダードになっていくのではないか。私が指導する学生たちも、すでにそのような挑戦を考えている者がいます。

 チャンスがあれば世界のどこへも飛んでいく。昔も今も、夢に近づくにはその覚悟が求められます。やるべきことが明確になれば、あとは実行あるのみ。桂川の優勝は改めてそれを教えてくれました。

(羽川豊/プロゴルファー)

  ◇  ◇  ◇

 桂川のように海外で華々しく活躍する選手がファンを沸かす一方で、国内男子ツアーの人気低迷ぶりは悲惨の一言に尽きる。日程は虫食い状態で録画放送がはびこり、コースは低レベル。そんな事態を招いた「元凶」について、●関連記事【もっと読む】…で詳しく報じている。