旧築地市場(東京都中央区)跡地に建設予定の5万人収容の屋内全天候型マルチスタジアムについて、巨人山口寿一オーナー(67)が1日、言及した。

都内で開催された「築地地区まちづくり事業」事業予定者決定に関する記者会見に、事業者の読売新聞グループ本社代表取締役社長として出席。東京ドームに代わる新たな巨人本拠地となる可能性について「前提としてあるものではない」としながらも「使ってみたい気持ちはある」と本音をのぞかせた。

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かつて日本の台所と呼ばれた築地市場跡地に、5万人収容の新球場が誕生する。大規模な事業計画に関する記者会見で、巨人の本拠地移転の可能性について質問が及ぶと、山口オーナーは表情を変えることなく、言葉を紡いだ。「巨人軍の本拠地移転を前提に検討してきたものではございません」。その上で、野球場に限らず用途に応じて形を変える可変性と多機能性、世界に負けない複合娯楽施設として計画する新球場に「魅力あるスタジアムとして我々としては使ってみたい気持ちはあります」と、心の内をのぞかせた。

東京ドーム4個分にも及ぶ19ヘクタールの広大な敷地面積には、近未来の世界観が詰まっている。臨場感と高揚感、そして没入感を提供する設計、デザインで、環境共生型のスタジアム。事業計画にある想定スケジュールによると、周辺の商業施設やホテル、レジデンスとともに、8年後の32年度に完成を予定している。その魅力を口滑らかに語った後、繰り返した「前提としたものではございません」と言葉を付け加えたのも、また本心だった。

「プロ野球の球団にとって本拠地球場の移転はなかなかな大仕事でございまして、そのためには相当な調整も必要になります。さらに申し上げると、読売だけで決められるということではございません」。巨人が今季も本拠地とする東京ドームは、88年に開場してから36年が経過。老朽化が懸念され、これまでも改修を行ってきた。巨人の公式戦だけでなく、昨年3月にはWBC1次ラウンドと準々決勝ラウンド、メジャー開幕戦も開催してきた。

新球場での国際試合に話が及ぶと、トーンを少し上げた。「国際大会、国際試合については新しいスタジアムは良き舞台になる。今後もメジャーリーグとの関わりのみならず、韓国もしくは台湾、アジアも見渡せば、有力な野球選手がそろっているエリア。そういうところを想定した国際試合は、新しく組み立てができる可能性がある」。東京の地図を書き換える大規模計画の事業者として、決して遠くない未来を思い描いた。【栗田成芳】

◆事業計画 事業予定者は三井不動産を代表企業とし、トヨタ自動車、読売新聞グループ本社、朝日新聞社などの11社で構成するグループ企業体。総事業費9000億円で、スポーツイベントや大規模展示が可能なスタジアムを建設するほか、ホテル、住居や舟運、地下鉄新線の乗り入れ、空飛ぶクルマなどの交通インフラを整備予定。隅田川に面した築地5丁目、6丁目にまたがる約19ヘクタールの都有地を、70年の定期借地契約で借り受け再開発する。大部分の施設は2032年度に開業予定で、最終的な建築工事完了時期は2038年度としている。