<高校野球福岡大会:玄界0−4北九州>◇29日◇北九州

「戦国・福岡」の夏が始まった。九州最多の135チーム(連合1チーム)が出場する福岡大会が29日、開幕。楽天渡辺翔太投手(23)の母校、北九州が玄界を4−0で下し、1番星を挙げた。先発した谷元魁斗投手(3年)が7回4安打無失点の快投。6回の守りで正二塁手の塚本幹也内野手(3年)が左肩脱臼で負傷交代し、背番号10が仲間への思いを胸に力を振り絞った。

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谷元は2度も雄たけびを上げ、力強く右のこぶしを握った。

「ここで抑えないといけなかった。最高です」

1点リードの6回1死二、三塁。一打逆転の危機で「ギアを上げた」。後続を一ゴロ、三ゴロと2者凡退に打ち取る。決め球はいずれも直球を選択。球速は110キロ台中盤でも、最後は気持ちで勝った。「強気にいけたと思う」。わずか3球でピンチを切り抜けた。

仲間の離脱に奮い立った。直前に正二塁手の塚本が負傷交代のアクシデント。6回1死二塁で中堅へ抜けそうな打球に向かって横っ跳びし、その際に左肩を脱臼した。背番号4はその場でうずくまり、その後担架で運ばれて試合中に救急車で病院へ直行。マウンド上の谷元は、気迫あふれるプレーに刺激をもらった。「抜けていれば1点取られていた。ここで自分が頑張らないといけなかった」。塚本のために、チームのために、抑えたい一心だった。

努力する姿も見てきた。塚本はチーム事情で、2年時に外野手から二塁手へコンバート。谷元は「『自信がない』って言うんですけど、練習してくれている。何度も(塚本の守備に)助けられている」。2人は体育コースに在籍し、3年間クラスも同じ。お互いを知り尽くす間柄だ。

井手下慎司監督(40)は「開幕ゲームをできる喜びはあったと思います。選手が役割をこなしてくれた」と、福岡1番星をつかんだナインをねぎらった。負傷の塚本について「様子を見て判断します。3年生なので多少のケガであれば出ると思います」と、次戦以降もベストメンバーで臨む。【佐藤究】

◆谷元魁斗(たにもと・かいと)2006年(平18)8月29日、福岡県出身。市丸小3年にソフトボールを始め、東谷中では八幡東ボーイズに所属。北九州では2年春からベンチ入り。好きなプロ野球選手はソフトバンク今宮健太。好きな芸能人はあばれる君。178センチ、63キロ。右投げ左打ち。