宮城一の兄弟げんかが始まる。

宮城県角田市出身の双子レスラー斉藤ジュン(37)、斉藤レイ(37)の「SAITO BROTHERS」が、5月3日に夢メッセみやぎで行われる「チャンピオン・カーニバル2024」で対戦する。21年6月に、ともにプロレスを始めてから3度目となる兄弟げんか。2人は仙台城(青葉城)跡で対戦への意気込みを語った。【取材・構成=濱本神威】

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これまで幾度となく兄弟げんかを繰り広げてきた。双子の兄ジュンは「男兄弟はみんな昔からバチバチにやり合っているとは思うが…。SAITO BROTHERSもなかなか激しい兄弟げんかをしてきた」。家の物が壊れたり、壁に穴があいたり、車のフロントガラスが割れたり…。リングで見せる姿同様、激しいのは言うまでもない。

プロレスを始めてからリングの上で戦うのは3度目だ。弟レイは「デビュー当初に東京の大田区で1回、去年の大みそかに代々木で1回。どっちも俺が普通に負けている。だからこの大会ではやり返すってわけではないが、俺が勝って、シングルでも俺のほうが強いってことを示したい」と、兄へのリベンジに燃えている。しかしその弟をからかうように、「今回は『絶対勝ってやる』と気合が入っているみたいだが、もちろんこのまま3連敗。10連敗ぐらいさせてやりたいな」と兄ジュン。続けて「兄より優れた弟はいないと思っているから、きっちりとたたきつぶす」。今年の兄弟げんかは地元開催ということもあり、一層激しくなりそうだ。

直径4・55メートルの土俵よりも、約6メートル四方のリングの方が生き生きしている。2人は大学卒業後、大相撲・出羽海部屋にそろって入門。8年間力士として土俵の上で戦ってきた。ステージは変わり、今はリングの上。弟レイは「土俵の上での相撲は神事。喜怒哀楽を表現してはいけない。だがプロレスは逆に、自分の中のモノ以上のモノを人に見せなきゃいけない」という。リングの上に表れるのは感情だけじゃない。兄ジュンが「(プロレスは)練習だけじゃなく、今まで自分が経験してきた、生きてきて培ってきたことをいかにリングの上で出すか」と語れば、弟レイは「人生経験が全部リングに出る。そこもプロレスの魅力だ」。相撲では不完全燃焼に終わったという兄ジュンは「ずっとモヤモヤしたものがあった。そのモヤモヤを、今全部出してきている。だがまだまだ足りない。自分をもっと解放する。もっともっと出していきたい」。生きざまを感情に乗せ、リングの上で爆発させる。

3月31日、極悪ユニット「VOODOO−MURDERS(ブードゥー・マーダーズ=VM)」が全日本プロレスを撤退。それに伴い、「SAITO BROTHERS」もVMを卒業した。だが「SAITO BROTHERS」が大きく変わることはない。兄ジュンは「ヒールをいくら卒業したといっても、SAITO BROTHERSはSAITO BROTHERS。ヒールじゃなくなったことで、今まで『ヒールとして』縛られていたものがなくなり、むしろ自由に、もっと暴れ回れる。リング内外でもっとパワフルになっていく」。弟レイは「SAITO BROTHERSは唯一無二の存在」。ベビーフェイスでもヒールでもない「SAITO BROTHERS」というジャンルを突き詰めて行く。

兄弟げんかと同じく、プロレスを始めて3度目となる宮城凱旋(がいせん)。弟レイは「去年のチャンピオンカーニバルも同じ夢メッセだったが、今年はより大きな会場で試合ができる。お客さんも結構入ると思うし、素直にうれしい。去年とまた違ったいろんなものを見せることができる。熱い戦いをしっかりとお見せしたい」と意気込んだ。兄ジュンは「俺たちSAITO BROTHERSが、もっと活躍して、宮城県自体をもっと盛り上げていきたい」。熱く激しい兄弟げんかで、故郷をたぎらせる。【濱本神威】

◆斉藤ジュン(さいとう・じゅん)1986年(昭61)12月19日生まれ、宮城県角田市出身。21年6月デビュー。斉藤レイは双子の弟。得意技はサイコブレイク、スパインバスター。193センチ、116キロ。

◆斉藤レイ(さいとう・れい)1986年(昭61)12月19日生まれ、宮城県角田市出身。21年6月デビュー。斉藤ジュンは双子の兄。得意技は逆水平チョップ、ドリル・ア・ホール・パイルドライバー。192センチ、145キロ。

◆チャンピオンカーニバル 全日本プロレスが主催するヘビー級選手によるシングルマッチのリーグ戦。「春の祭典」「春の本場所」として毎年開催される。