人口減、少子高齢化が進む中で、衰退しているイメージが強い商店街。でも、普段は縁遠い若者の目線で見ると、違った姿が浮かぶのではないだろうか。九州大の学生が制作するラジオ番組「ケロケロ見聞録」(ラブエフエム国際放送)では5日、商店街の活性化策を探った。

 出演は九州大学文学部3年の奥野萌衣さん(20)と、農学部3年の賀来りさ子さん(20)。2人が商店街に抱いていたのは「昔ながらの」「寂しい」などマイナスの印象だった。

 そこで福岡県中小企業振興課に取材すると、意外なことに商店街の数は変動していないという。ただ、店舗数が減り続けている。くしの歯が欠けるように店が閉まり、「シャッター商店街」と呼ばれるのはそのためだ。主な要因は人口減のほか、郊外型の大型店やネットショップに顧客を奪われたことにある。

 この取材で奥野さんが気になったのは「商店街は店の集まりではなく、人の集まり」と言われたことだった。ただ店を増やせばいいというわけではない。活性化のビジョンを描くには、商店街を支える人を組織して、その地域コミュニティーならではの「味」を創出することが大切だと感じたそうだ。

 そうした商店街の現場を肌で感じようと、2人は福岡市博多区吉塚のリトルアジアマーケットと、福岡県糸島市の前原商店街を訪問。若者向けのおしゃれな店があったり、見たこともない新鮮な魚が売られていたり、想像していた「廃れた商店街」とは違う姿に驚いたという。

 前原商店街では、九州大の学生サークル「ENGAWA PROJECT」が居酒屋の経営やギャラリー運営に携わっていて、古民家ゲストハウス開業も準備している。番組インタビューに応じたメンバーたちは「学生が主体的にまちづくりに関わって前原の魅力を発信することで、人の輪を広げたい」と話していた。

 こうした取材を通じて、賀来さんは「若者は商店街に接点がないだけで、興味はある。行ってみると楽しいし、アットホームな雰囲気は魅力」。奥野さんは「商店街の温かい接客は、学生にとっても学びになる。アルバイトさせてもらえたら、日常的な接点もできる」と提案した。

 最後に2人は、理想とする商店街のキーワードを考えた。賀来さんは「出会う人たちがもうひとつの家族」。奥野さんは「日常と非日常の融合」。接点のない若者にとって、商店街は「昭和レトロ」に見えるが、そこの人々と実際に触れ合い、体験を共有することで感情を揺さぶられる。商店街は、われわれ若者が成長できる貴重な場なのかもしれない。(九州大共創学部3年・江島光亮)

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 番組(毎月第1日曜)は九州大の学生チーム「メディアンリアン」が運営。メンバーが随時、内容を西日本新聞meで紹介する。