「売り子も球場を盛り上げる3日間に」―。福岡ソフトバンクは6日からみずほPayPayドームで行う日本ハム3連戦をルーフオープンデーとし、球団初となる売り子にスポットを当てたイベント「VIVA売り子Night」を開催する。その中でもメインとなるのが売り子たちが販売杯数を競う「売り子ダービー」だ。

試合を盛り上げるイベント加藤里歩さん

 「いつも頑張る売り子さんを応援したい!」という思いから企画された。「今までは『ルーフオープンデー』という名称だけでしたが『VIVA売り子Night』というサブタイトルが初めて付きました」。イベントを取り仕切る加藤里歩さん(イベント企画課)は説明する。日頃から飲食部門で情報交換している楽天の同様の取り組みを参考に、日本ハムとも連携し実現した。売り子たちは試合前やバズーカタイム(3回表終了後)、よかよかダンス(4回表終了後)にも登場する予定だ。

売り子について「球場らしさを演出できる重要な存在」と語る高屋大志さん

 売り子の役割について「最前線でお客さまにサービスを提供できる人たちの中でも『球場らしさ』を演出できる重要な存在です」と話すのは飲食テナントの責任者である高屋大志さん(飲食テナント課課長)。2年前のオフから構想自体はあったが話がまとまらず、昨年の実施は見送りとなった。「今年こそは」という思いで開催にこぎ着け、売り子からは感謝の声もあがっているという。

昨年のルーフオープンデーの様子(撮影・西田忠信)

 「ダービー」は各試合日ごとに販売数の上位3人を決定する。生ビール、ハイボール、チューハイが対象で100〜150人が7回裏までの杯数を競う。ちなみに、グッズやアイスクリームなど含めた売り子の総勢は400〜500人登録されている。見事1位となった売り子は試合終了後にグラウンドで表彰され、3位までは日ごとに異なるデザインの缶バッジが贈られる。本イベント終了後も身に着けることが可能で、自分自身のアピールに活用可能。高屋さんは「ひょっとしたら3日間、同じNo.1が出るかも」と〝覇者〟の登場にも期待している。

売り子の現状について説明する福岡浩也さん

 ビール担当の売り子を例に挙げると、背負う装備の総重量は15〜16㌔。樽は速い人で1イニングに1度のペースで交換する。給料は一定の時給に加えて、1杯当たりのインセンティブがプラスされる仕組みだ。

 「売り子自身の名前と選手名がリンクすることが大事」と話すのは売り子営業と店舗誘致を担当する福岡浩也さん(飲食テナント課)。そのため売り子自身のネーミングを工夫し、応援する選手のグッズやキャラクターを身に着け観客との接点を探る。また「おいしく注ぐ」ことも重要な要素で、定期的に研修を受けて日々スキルを磨いている。

 ドームでは多い日で2万杯近く売れることもあるというビール。「1日100杯売れれば上等」と言われる世界で、過去には1日400杯売りさばいたレジェンドや、ドーム開業の1993年から2018年ごろまでずっと在籍していた男性もいたそうだ。

昨年のルーフオープンデーの様子(撮影・柿森英典)

 ドームで働く人のなかでも「売り子になりたい」という人は多い。しかし、華やかな印象とは裏腹に体力勝負の現場、観客とのコミニュケーションの問題などから辞めてしまう人も少なくないという。そんな課題解決へ福岡さんは「このイベントがあるから頑張ろうとか、表彰されたいというモチベーションにつながれば」という狙いもあると明かす。

 3人は「ゆくゆくはパ・リーグ全体でやれたらいい」と口をそろえる。グラウンドに負けじと繰り広げられるスタンドの戦い―。その行方にも注目してみては?(佐藤泰輔)

売り子イベントが「パ・リーグ全体でやれたら」と話す(左から)高屋大志さん、福岡浩也さん、加藤里歩さん