まもなくファイナルステージを迎えるバレーボール男子V1リーグ。レギュラーラウンドを首位で終了したのパナソニックパンサーズ所属の兒玉康成選手は、地元・枚方の書店さんとコラボして「本屋大賞」予想会を開くなど、読書家としても知られている。そんな兒玉選手が、高校のバレー部を舞台にした青春小説『八秒で跳べ』(坪田侑也・著/文藝春秋刊)の感想を自ら綴ってくれた――。

◆◆◆

『八秒で跳べ』を読んでみて、まず真っ先に思った事は主人公のように高校時代にバレーを俯瞰して、考えた記憶がないなというものでした。確かに思うようにプレーができず壁にぶつかることは多々あったように思います。

 ですが、考えるよりも先に体にその動きを染み込ませるかの如く練習して、練習して、練習してそれでもできなかったら練習してという毎日でした。作中の主人公のようなバレーの見方が高校時代にできていたら今の自分はもっと違っていたのかなと考えさせられました。

 また、私は明鹿高校のような共学の高校ではなく、むさ苦しい男子高出身で大会の結果などがそのまま学校内でのヒエラルキーに直結するような高校でした。大会で結果を残すこと、県内では1位になることが当たり前で、この本を通じて私が青春を捧げた高校時代を追体験できるような場面や感覚はなかったのです。多分私の高校時代が特殊すぎるのですが。

 しかし、そんな特殊な高校時代から大学、社会人を経た今はこの本を読み純粋に楽しむことができました。

高校時代に自分がこの本を手に取っていたら…

 自分の高校にはなかった淡い共学の雰囲気。何かに一生懸命になった人にしかぶつかることのできない壁を、人との出会いをきっかけに乗り越える感動。これらのことを本の中の主人公の視点になって一緒に楽しむことができました。年明けの景と真島さんが今後どうなっていくのか。明鹿高校バレー部が翌年どんな結果を残したのか、とても気になります。

 部活や熱中するものがある中高生や大学生など学生の方に多く手に取って読んでもらいたいなとすごく思いましたし、私自身も高校時代の自分がもしこの本を手に取っていたらどんなことを思ったのだろうとすごく気になりました。

 総じて楽しく読むことができ、バレーボールを題材にしてくれていることで親しみやすく沢山の人におすすめしていきたいです。

 本を読むのは好きなのですが文を起こすのは苦手で、拙い文章になってしまい申し訳ありません。今回は素敵な本を送っていただき本当にありがとうございました。また機会がありましたらお会いしてバレーボールや本のことをお話しできたら嬉しいです。

 ぜひパンサーズの試合も見にきてください。

 ありがとうございました。

兒玉康成(パナソニックパンサーズ)Yasunari Kodama

1994年鹿児島県生まれ。中学時代からバレーボールを始め、鹿児島商業、筑波大学を経て、2017年パナソニックパンサーズに入団。ポジションはミドルブロッカー。趣味は読書で年間100冊もの本を読む。

文=兒玉康成

photograph by ⓒPanasonic PANTHERS(右写真)