猛虎を38年ぶりの日本一へと導き、泰然とした雰囲気を漂わせる指揮官・岡田彰布。今季の展望や期待する選手の起用法、自らのリーダーシップについて話を聞いた。
(初出:発売中のNumber1093号[連覇への青写真を語る]岡田彰布「今年は選手が主役よ!」より)

今年は「アレ」ではなく「連覇」

――いよいよ連覇を目指す戦いが始まります。春季キャンプ、オープン戦を経て、手ごたえはいかがですか。

岡田 今年はもう、最初からやるべきことが分かってるし、メンバーもある程度、固定できるチームになった。あんまり心配はないわ。去年は最初から手探り。ポジションを替えたりな。打順にしても、本当にシーズンでうまくいくかという部分でも手探りやったから、全然違うよ。

――例年、オールスター明けからが勝負だと話しています。今年はどのあたりにピークを合わせようと考えていますか。

岡田 シーズン中、どこから勝負というのは、あんまりないかも分からんよね。まあ、最初はやっぱり混戦でいくと思う。最終的には9月やで。やっぱり100試合を超えてからやろうな。

――昨年は優勝のことを「アレ」と表現していましたが、今年は堂々と「連覇」と言っています。ズバリ、連覇の条件は。

岡田 去年と同じメンバーでは無理やと思っているからね。投手も野手も、一人でも二人でも新戦力は要るわな。俺は評論家やったけど(2022年の)ヤクルト、('20年の)巨人とか、ちょっと前の広島とか見とっても、プラスアルファがあったから連覇できたと思うで。やっぱり新戦力よ。どこも同じメンバーでは勝ってないと思うな。

野手の伸びしろ、投手の伸びしろ

――今年、タイガースの伸びしろはどのあたりにあるのでしょう。

岡田 今の段階ではアレやな、野手ではやっぱり前川(右京)やな。まだ完璧に外野のレギュラーポジションを獲るところまでじゃなくても、ある程度、使えると思う。アイツの良さはバットを振れることよ。去年も振れとったけど、どちらかというとボールを潰しに行くような、ドライブがかかった打球やった。今年は2月のキャンプから、ボールが上がるようになったからな。直接指導はしてないけど、打撃コーチを通じて「ちょっとポイントが近すぎる。ボールを潰しすぎや」と言うてたよ。だいぶポイントもようなってきたよな。今まで、外野の左バッターは近本(光司)だけで、あとは右バッター。そこに左打ちの前川が一人加わるだけでだいぶ違うよ。

――中堅は近本選手、右翼は森下翔太選手で固定され、左翼をシェルドン・ノイジー選手と争う立場。シーズンでは併用で先発出場するとみていいですか。

岡田 そうそう。前川は右投手には大丈夫よ。いけると思う。左投手にはなかなか結果が出んから、まだちょっとしんどい。でも、右投手やったら打つわ。

――投手陣の伸びしろはどうでしょうか。

岡田 先発で門別(啓人)やな。ローテーションは去年の6人がおるけど、6人で1シーズンは無理やからね。誰かの調子が落ちることもあるから、そこで入っていけるかどうかやろな。門別はストレートのキレがいいし、コントロールもいい。まだ高卒2年目やけど、四球で崩れたりとか、そういうのがない。だから、ゲームを作れるよな。絶対に一軍で通用すると思うよ。

門別とあと1枚。これは絶対に必要や

――'07年は上園啓史投手を最初、下位チームにぶつけて白星を重ねさせ、新人王を獲らせました。門別投手にどう好スタートを切らせるかも考えていますか。

岡田 そら、考えてる、考えてる。去年は村上(頌樹)を中継ぎからスタートさせて、先発に抜擢した。門別とあと1枚。これは絶対に必要やと思ってるよ。上園は6月の交流戦からやったからな。門別はもっと早いよ。若いピッチャーは早く1勝がつくと気持ち的にも大きいんやで。

――3月のオープン戦では昨年好調だったリリーフ陣が不安定で、メディアからは心配する声も上がっています。

岡田 いや、リリーフも(ハビー・)ゲラを使えるメドが立ったからな。あと、今年は岡留(英貴)やな。去年は左を5枚、ブルペンに入れとったりした。左対左の時はいいけど、右打者との対戦の時に不安があったからな。ブルペンは8人、多くても9人やけど、去年より右左のバランスのいい人数でいけるやろ。ゲラと岡留は“新戦力”。2人使えるというのは本当に大きい。

文=酒井俊作

photograph by Kiichi Matsumoto