大分県内トップクラスのメガファームに躍進を遂げた農業法人「らいむ工房」。代表の男性は当初、60アールのコメ作りからスタート。その後、規模を拡大し、年間売上も約3億円にまで達しました。耕作放棄地を積極的に活用する独自の経営と新たな挑戦に迫ります。

「脱サラ」してUターン、農業参入

(らいむ工房・佐藤司会長)「農業が好きですね。1日農業する時間があると非常に幸せになる」

らいむ工房・佐藤司会長

大分県国東市の農業法人「らいむ工房」で代表を務める佐藤司さん(50)。本業の建設業を営むかたわら、コメやムギ、小ネギなどを栽培しています。

もともと県外でサラリーマンをしていた佐藤さんは家業の建設会社を継ぐため、2009年にUターン。会社では当時60アールほどの農地でコメを作っていましたが、最初の試練が訪れます。

(佐藤司会長)「田んぼも何となく兼業でやっていたんですが、トラクターと農機具が一気に壊れて、見積もりを取ったところ、びっくりするような値段がきた」

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一時は農業をやめることも考えたという佐藤さん。そのとき、ふるさとに広がっていたある光景に目を付けました。

(佐藤司会長)「実はこの辺り全部耕作放棄地。地元の人から元に戻せるんだったら使っていいよというお話をいただき、元に戻したところ」

規模拡大に成功…地域活性化、雇用創出へ

建設業で培った造成の技術を活かして耕作放棄地の活用に乗り出します。はじめは地権者から「信頼できない」といった理由で確保に苦戦。しかし、約10年で100ヘクタールの面積まで拡大。今では500人以上の地主から計190ヘクタール、東京ドーム40個分もの広さの農地を借りて、県内最大級のメガファームへと躍進しました。

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(佐藤司会長)「これがアグリノートというシステムで、うちの社員がいつ何時に何をしたという記録が全部残っています」

大規模経営を支えているのがITの技術。このシステムでは各地に点在する1500枚もの圃場の進捗や従業員全40人の動きが一目でわかり、効率化につながっています。

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若い社員に経営を任せることも急成長できた秘訣だそうです。小ネギのハウス144棟を統括する平本さんは29歳。高齢化が進む農業で、らいむ工房の平均年齢は30代と若い力が生産を支えています。

(平本和樹取締役)「上司から言われてやるのと自主的に自分から考えてやれる環境がある差は大きいと思う。プレッシャーもありますけど、いい方向に進んだと思う」

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らいむ工房は今年、新たな挑戦を開始しています。大手総合商社、双日の子会社「双日農業」と連携して、タマネギの生産に参入。この日は、初出荷に向けて収穫を行いました。今年は2ヘクタールの規模ですが、8年後には40倍の80ヘクタールまで拡大させる大きな計画です。

(佐藤司会長)「こうやってお米が植わっていると非常にきれいじゃないですか。1枚でもこういう風に元に戻したい。女性が活躍できる世界だと思う。ほとんど機械化できているので、女性の社員を迎えながら若い社員と一生懸命、真剣に農業していきたい」

独自のアイデアと農地や産品を開拓する攻めの経営で拡大を続ける佐藤さん。見据えているのは地域の活性化や雇用を生み出す、そんな夢があふれる農業です。