デンマークに暮らすその善良な家族は、たまたま出会った家族連れと意気投合し、食事会に誘われる。善良な家族は、相手も善良だと信じて疑いもしない。

 しかし、その食事会は嫌〜な感じの出来事の連続。小ばかにされ、遠回しに侮辱され、恐怖を感じ、善良な家族の心は少しずつ、でも確実に削られていく。

 不穏な空気をエンターテインメントに昇華させた幽霊の出てこないホラー映画は、ひどい男にほれてしまったあの恋に似ていた。恋人とは思えない雑な扱いに憤慨し、自分の中に巻き起こる初めての感情に戸惑いながらも、全てはほれた弱み。冷遇も悪態も受け入れ、小さな愛を見つけては歓喜した日々。終わってしまえば二度と顔も見たくない人だけど、刺激的だった分、思い出深い。

 嫌な思いをしながらも、その魅力からは目が離せない。これはそんな映画。(桜坂劇場・下地久美子)

◇同劇場で5月10日から