琉球ゴールデンキングス、最終節で“本来の姿”を取り戻せるか
ベンチで選手に指示を出す琉球ゴールデンキングスの桶谷大HC=4月27日、愛知県のドルフィンズアリーナ©琉球ゴールデンキングス

バスケットボールの世界でよく使う言葉の一つに「momentum(モメンタム)」という英単語がある。「勢い」「流れ」といった意味だ。目まぐるしく攻守が入れ替わるバスケットボールにおいて、いかに勝負所でモメンタムを掴むかは勝敗を分ける大きなポイントの一つになる。

プロバスケットボールBリーグ西地区の琉球ゴールデンキングスは最近、試合終盤でモメンタムを引き寄せるのに苦戦している。

レギュラーシーズン(RS)残り2試合で通算成績は40勝18敗。依然として地区首位はキープしているものの、直近の成績は2019-20シーズンの2020年1月に喫して以来の3連敗となっている。特に4月27、28の両日にアウェーであった西地区2位の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(名古屋D)との2試合を落としたことで、ゲーム差を「1」に縮められた。西地区7連覇の偉業を目前に、足踏みが続く。

同一カードでの連敗は今シーズン初めて。実に4年3カ月ぶりの3連敗と合わせ、ここまで負けていないチームも珍しい。それ自体は、いかにキングスが強豪であり続けているかを証明しており、賞賛に値することだろう。

ただ、やはり現状ではチーム状態が良いとは言えない。連敗中の直近3試合は勝負所でモメンタムを引き寄せることができず、本来の持ち味である終盤での勝負強さが影を潜めた。復調するためには、何が必要なのか。

桶谷HC「やるべきことをやり続けることが重要」

琉球ゴールデンキングス、最終節で“本来の姿”を取り戻せるか
ディフェンスする岸本隆一©琉球ゴールデンキングス

名古屋Dとの連戦では、初戦は激しいディフェンスと高確率のスリーポイントシュート(3P )で前半から流れを掴まれた。第3クオーター(Q)途中でこの試合最大となる18点差を付けられ、最後はオールコートでプレッシャーを掛けて追い上げたものの、77ー83で敗れた。

第2戦はディフェンスの強度を高めて臨み、15回もリードチェンジがある息の詰まるような接戦に。しかし、第4Qの勝負所で好調だったヴィック・ローが審判に不満を訴えてテクニカルファウルを吹かれ、これが自身四つ目のファウルとなってベンチに下がらざるを得なくなった。すると、逆に相手にモメンタムを持って行かれてリードを許し、79ー86で逃げ切れた。

第2戦後、桶谷大HCは以下のように敗因を語った。

「我慢して、我慢して、最後に勝ちをもぎ取るということをやらないといけなかったんですけど、我慢しきれませんでした。昨日の敗戦から改善できた部分もありましたが、やるべきことをやり続けることがチームにとって重要なことだと感じます」

前節にホームで対戦して1勝1敗と星を分けた長崎ヴェルカ、そして今季の直接対決の成績が4戦全敗となった名古屋Dは、速攻からの得点の1試合平均がいずれもリードのトップ5に入っており、ディフェンスでは前線から積極的にプレッシャーを掛けるハイペースなスタイルを持ち味としている。重量級のインサイド陣を揃え、主にハーフコートで戦うキングスとは対照的だ。

それを念頭に、桶谷HCはチームが抱える課題にも言及した。

「今シーズンは、人の土俵に入ってバスケットをした時に脆さがあります。だからこそ、いかに自分たちの土俵でバスケットをできるかということが重要です。劣勢になった時の判断の悪さも一番の欠点だと思うので、チームメートを信頼し、どれだけ余裕を持ってプレーし続けられるかが大事になります」

「高いプレー強度」を維持できるか

琉球ゴールデンキングス、最終節で“本来の姿”を取り戻せるか
ディフェンスでプレッシャーを掛ける松脇圭志©琉球ゴールデンキングス

では、「我慢をする」「自分たちの土俵で戦う」ためには何が必要なのか。5月4、5の両日にアウェーである最終節の広島ドラゴンフライズ戦に向けて「どんな準備をしたいか?」と問われた際の、桶谷HCのコメントに答えの一つがある。

「今日ぐらいインテンシティ(強度)を上げてバスケットをできるか、フィジカルゲーム(身体的な当たりの激しい試合)に対してどれだけ準備ができているかが大事だと思います。それと戦術、戦略が整って、初めて勝負ができる。メンタルで絶対に負けず、相手よりもハードにプレーするというところはやり続けたいなと思います」

名古屋Dとの連戦では、持ち味であるスムーズなボール回しからフリーな3Pを打つ場面が多く見られたが、いずれの試合も成功率は20%台に低迷し、思うように得点が伸びなかった。だからこそ、ディフェンスで我慢することが重要なのだ。

その点で、最近の試合で注目したいのが、主にセカンドユニットを務める牧隼利、松脇圭志、荒川颯が同時にコートに立った時に見せるオールコートでのプレッシャーである。相手のハンドラー(司令塔)に対して激しく当たり、積極的にダブルチームを仕掛けるなどしてターンオーバーを誘ったり、ボール運びに時間を掛けさせたりして、流れを変える役割を担う。

名古屋Dとの第2戦後、その一角を担う牧も責任感を口にしていた。

「今日は昨日よりゾーンプレスを多めに仕掛けていくという話をしていて、それが比較的良かったと感じました。そこはコーチから任されている部分です。セカンドユニットにここまで時間を与えてくれるチームはあまりないので、ゲームを繋ぐだけではなく、いかに流れをつくるかということに責任を感じています」

オールコートかハーフコートかに関わらず、この3人が見せているようなディフェンスの強度を各選手がスタンダードにしたい。もちろん、リバウンドやルーズボールに対する執着心の高さも求められる。それを40分間体現して我慢を続ければ、終盤でモメンタムを引き寄せる鍵になるだろう。それこそが、キングスの最も得意とする勝ちパターンだったはずだ。

広島戦、自力での地区優勝決定条件は2連勝

琉球ゴールデンキングス、最終節で“本来の姿”を取り戻せるか
ゴール下で体を張るジャック・クーリー©琉球ゴールデンキングス

現在、地区優勝マジックは「2」となっているため、広島との連戦で2勝すれば自力で地区優勝を決めることができる。一方、1勝1敗もしくは2敗となった場合は、5、6の両日に行われる名古屋Dの最終節(対佐賀バルーナーズ)の結果次第で地区1位と2位の順位がひっくり返る。勝敗数が並んだ場合は、直接対決の結果で名古屋Dが上の順位となる。

もちろん地区優勝を飾り、CSの初戦をホームの沖縄アリーナで戦うことは、勝利を引き寄せる上で大きなポイントだ。ただ、桶谷HCが「このまま行ってもCS(で勝ち上がるの)は難しいと思っています」と危機感を語ったように、先の試合のことや他カードの結果よりも、まずは自分たちが目の前の広島戦でどのようなパフォーマンスを見せるかが最もフォーカスすべき事項となる。

西地区3位で目下4連勝中の広島は現在、上位2チームがCSに進出するワイルドカード(3地区の上位2チームを除く)で1位だが、2位の千葉ジェッツは1ゲーム差、3位のサンロッカーズ渋谷も2ゲーム差で迫っており、まだCS進出は確定していない。広島にとってもキングスとの最終節は負けられない試合であり、ホームの声援を背に、強固なメンタルと高いプレー強度で挑んでくることは間違いない。

相手にとって不足はない。広島戦が終われば、5日後の10日にはCSが幕を開ける。気持ちと気持ちのぶつかり合いになるであろう最終節で本来の強さを取り戻し、2連覇の懸かるCSへ弾みをつけたい。