月経カップや吸水ショーツを販売しているインテグロ株式会社が2024年1月18日に、女性の生殖器の構造をわかりやすく伝えるために作られた「女性生殖器模型」をインテグロ公式オンラインストアで発売開始。女性特有の健康課題をテクノロジーで解決するための製品やサービスを指す「フェムテック」が近年注目されているなか、同商品はさまざまな分野から脚光を浴びている。

「女性生殖器模型」を販売するにいたった経緯や、同商品に込められた想いなどについて、インテグロ株式会社の代表取締役に話を聞いてみた。

■インテグロ株式会社ってどんな企業?
「女性の健康課題を解決する商品やサービスを提供し、誰もが自分らしく活躍できる社会をつくる」をミッションに掲げ、月経カップの「エヴァカップ」「スーパージェニー」「ディーバカップ」、吸水ショーツの「エヴァウェア」を販売。新しい生理ケアを提供することで女性の選択肢を増やし、自由な生き方を応援するフェムテック企業だ。

同社は2018年の月経カップの販売開始以来、多くの人と生理や月経カップの使い方について伝えてきた。そのなかでわかったことは、多くの女性たちが自分の体のことをよく知らないということ。これは、初めて月経カップを使用する際の不安の大きな要因となっており、また婦人科の病気や異常が生じた場合の発見の遅れにつながる可能性も。そこで、インテグロは月経カップを通じて女性の体のしくみを正しく伝えるためにこの「女性生殖器模型」を導入・販売へといたったという。

■模型に込められた想いについて代表取締役に聞いた
本商品発売への想いや、模型のおすすめポイントなどをインテグロ株式会社 代表取締役の神林美帆さんに聞いた。

――「インテグロ株式会社」の立ち上げや、月経カップ販売のきっかけを教えてください。

【神林美帆】私が月経カップと吸水ショーツに出合ったのは、2016年。今の夫との出会いとともに、なんと彼から紹介されました。実は、夫の友人の奥様がカップや吸水ショーツをつくっている企業のCEOだったのです。ワクワクとドキドキが入り混じるなか興味津々で使ってみたところ、その快適さに衝撃を受けました。

【神林美帆】生理によるさまざまな不快感やわずらわしさから解放されると同時に、今までそれを当たり前のこととして長年我慢してきたことに気がつきました。いつも漏れないか気にしていたり、かさばるナプキンやタンポンを持ち歩いたり、旅行先で大浴場に入るときにタンポンの紐を気にしたり、大事な予定に生理がかぶらないか心配したり…。このような小さなことが積み重なってストレスになっていたんですね。さらに、月経カップや吸水ショーツをきっかけに自分の体のことを知ったり、生理や体のことを人と気軽に話せるようになったり、思いがけない変化も生まれました。

【神林美帆】「憂鬱になりがちな生理をこんなにポジティブにしてくれるアイテムをもっとたくさんの人に知ってほしい!」その思いで2018年5月、まだフェムテックという言葉も存在しないおよそ6年前に、国内でいち早く、月経カップと吸水ショーツの販売を開始しました。

【神林美帆】当初は、日本では誰もが「月経カップって何?」「吸水ショーツって何?」という感じで、認知度はほぼゼロでしたが、2020年ごろからのフェムテックの盛り上がりとともに、2021年にはユニクロなど大手企業も次々に参入し、月経カップも吸水ショーツも生理ケアの選択肢として一気に広がりました。おそらく知らない方のほうが多いと思いますが、実は、インテグロは国内のフェムテックのパイオニアなんですよ。

――この模型を作るにいたったきっかけや、思いについて教えてください。

【神林美帆】インテグロは2018年にこの事業を開始して以来、たくさんの人たちと生理や月経カップの使い方について話してきました。そのなかでわかったことは、多くの女性たちが自分の体のことをよく知らないことでした。そこで、私たちは月経カップを通じて女性の体のしくみを正しく伝えるために、この模型を導入することにしました。使い始めてみると、学校や自治体での性教育、産婦人科や助産院における患者への説明、美容サロンでの指導など、さまざまな場面でこの模型を活用したいというお声をいただくようになり、正式に販売を開始することにしました。

――模型のおすすめポイントを教えてください。

【神林美帆】一番のおすすめポイントは、体の構造を立体的に理解しやすいということです。女性の生殖器のほとんどは体の中に存在するため、腟の入り口を鏡で見ることができても、腟、子宮、卵巣などの内性器は見ることができません。従来の教科書やメディアで見かける図では、それぞれの臓器の位置や向きがわかりづらいという課題があります。この模型を使うと、子宮と腟は、膀胱と尿道、直腸と肛門の間に挟まれるように位置すること、腟は尾てい骨の方向に後傾していることが明確に理解できます。また、模型の明るいカラーリングによって、まだまだタブー視されがちな女性の生殖器についての知識を楽しく学ぶことができるのもポイントです。

――2024年1月に発売したばかりではありますが、実際に活用された例などありましたら教えてください。

【神林美帆】実際に、包括的性教育を行っている団体がイベントで活用するために購入されたり、デリケートゾーンのケアアイテムなどを販売する企業が製品の使い方の説明時に活用するために購入されたりしています。大学内でのフェムテック啓発イベントを企画する学生たちが活用する事例もありました。

【神林美帆】また先日、視覚障害者の社会参画を応援する団体と共同で、視覚障害者向けのフェムケア勉強会を開催し、その際にこの模型が大活躍しました。「模型を触りながら学ぶことで、体の構造や臓器の位置がイメージしやすくてわかりやすかった。月経カップの使い方も理解できたのでぜひ使ってみたい」と大変喜んでいただきました。私たちもこの模型の新たな可能性を感じてうれしくなりました。

――月経カップは日本での使用率は欧米に比べてかなり低いといわれていますが、その理由についてどうお考えですか?

【神林美帆】ナプキンとタンポンの使用率において、欧米ではタンポン派が7〜8割といわれますが、日本では逆でナプキン派が8割といわれています。また、タンポンと同様に挿入型の月経カップにも抵抗がある方が多いと感じています。初めて月経カップを見た方のコメントで多いものは、「こんなに大きなものが入るの?」「違和感はないの?」「カップが体の中で迷子になることはないの?」「衛生的に大丈夫なの?」などです。これらはすべて、自分の体のことをよく知らないために出てくる不安や疑問なんです。

【神林美帆】腟の入り口は狭いですが、腟は伸縮性のある筋肉でできているので、カップが収まるスペースは十分にあります。腟はまっすぐ真上に向かっているわけではなく、尾てい骨のほうにやや後傾しているため、折りたたんだカップを斜め後ろに向かって挿入すると痛みなくスムーズに入ります。腟は指を入れて第一関節くらいまでは感覚がありますが、その奥は無感覚ゾーンなので、カップの装着感はほぼなく、カップを入れていることを忘れてしまうほどです。また、腟の奥には子宮の入り口があり、そこまでの長さは指1本分くらい。子宮の入口は直径約2〜3ミリなので、カップが子宮の中に入ることはありえません。腟内には常在菌が存在し、外部からの細菌の侵入や増殖を阻止する自浄作用があるため、正しい使い方をしていただければ、衛生的にも安心して使用することができます。

【神林美帆】このように模型を使いながら体の仕組みを丁寧に説明すると、みなさん安心して「使ってみたい!」と前向きになります。実際に多くのユーザーの方から「月経カップをきっかけに自分の体と向き合うことができてよかった!」という喜びの声をいただいています。

知らないことからくる不安を解消してくれる画期的な「女性生殖器模型」。正しい知識を獲得し、女性がより快適に過ごせる社会の実現へ向けて、これからさまざまなシーンで活躍しそうだ。

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取材・文=矢野 凪紗