発達に課題がある子を育てる親御さんは、子どもが小学生にあがるタイミングで「就学」について悩むことも多いだろう。学校では「特別支援学級」や「通級指導教室」といった選択肢も用意されているが、どちらに通わせるのが、我が子にとってベストな選択なのかと迷うのでは。判断基準や必要な準備について、池上おひさまクリニック院長の大和行男先生に話を聞いた。

■「特別支援学級」と「通常学級」との違い、それぞれのメリットとデメリットは?

 発達障害は、主にADHDや学習障害、自閉症スペクトラム障害(アスペルガー症候群、自閉症など)などが含まれる。他人との関係づくりやコミュニケーションなどが苦手だがが、優れた能力が発揮されている場合もあり、周りから見てアンバランスな様子が理解されにくい障害といわれている。そのため、親御さんも自分の子どもが通常学級に通えるのか、特別支援学級か通級学級なのか悩んでしまうことも多いのだ。

 都道府県や政令指定都市などによって定義は異なるが、基本的に「特別支援学級」とは、知的障害の学級や情緒学級など「子どもが抱えている困難の属性により通常学級とは別に設置される学級のことを指す」と大和先生は説明する。

 また、全ての学校に設置されているわけではないため、場合によっては、特別支援学級に通うために転校をしなければいけないケースもあるという。加えて、一部の授業のみを通常の学級とは別の通級指導教室で受ける「通級学級」という制度も存在する。

「通級学級は、在籍は通常級のままとして、週に1〜2時間程度、少人数の児童のみで構成される学級で個別支援を受けるものです。特別支援学級に在籍するほどではないものの、個別支援や学習支援が必要な場合に用いられます」

 発達障害のある子どもが特別支援学級に通うことのメリットとしては、「少人数クラスで複数の先生から個別に指導や支援を受けられる点」が挙げられる。

「逆にデメリットとしては、通常級に比べると授業の進度がゆっくりであるため、中学受験などを視野に入れている場合には勉強量が減ってしまう点などが考えられます」

■入学の1年前には準備をスタート「特別支援学級」に通わせたいときにするべきこと

 子どもが小学校へ就学する際、どの選択肢をとったらいいのだろうか。もし何らかの配慮や支援を受けたい場合には、「入学前に自治体の教育センターなどに相談しておく必要がある」と大和先生。

「その際には医師の意見書(診断書)が必要ですが、医師の診断書の作成にはWICS-IVや田中ビネー式などの知能検査を受けて、所見を心理士さんに記載してもらわなければいけません。そのため、小学校入学の1年前には自治体の担当課に相談した方がいいでしょう」

 通常学級に就学したものの、やはり特別支援学級に通いたいと感じた場合には、途中から変更することも可能だという。

「その際は医師の診断書は不要で、学校内での協議で決定されるケースが多いです。逆に言うと、親御さんが学校の先生にしっかりと相談をする必要があります。ただ、何よりもお子さんの考えを尊重することが大切です。特に、クラスに友達が多いお子さんは、特別支援学級に移ることで交友関係が途切れてしまう不安を感じやすいです」

 最後に、大和先生に我が子の就学に不安を抱えるお母さんや、就学後の子どもに不安を持ったお母さんにアドバイスをもらった。

「まずは幼稚園や保育園の先生方に家庭以外での様子を共有してもらい、我が子との接し方のアドバイスを受けると良いでしょう。その上で自治体の子ども支援課や教育センターに早めに相談して対応を協議されることをお勧めします」

監修者/大和行男先生
池上おひさまクリニック院長。メインは児童精神科、思春期美容皮膚科。地域の赤ひげクリニックを目指して、精神科・内科・小児科・皮膚科全ての診療科を予約なしで当日診療している。現在はメディア露出を増やし、児童精神科領域の啓発活動を目指している。