香水にまつわる映画3選　〜「ディオール」や「エルメス」の調香師の監修作も〜

5/24(金) 0:00

『パリの調香師　しあわせの香りを探して』© LES FILMS VELVET - FRANCE 3 CINÉMA

　春から初夏の花が美しい季節です。
　先日、とある民家の庭先を彩るバラからほんのりと甘くフレッシュな香りが漂ってきて、道行く人々を楽しませていました。

　バラの香りはさまざまな香水の原料となっていますが、こんな素敵な香りを身につけたい、と思うのは自然なことでしょう。
　そこで今回は、香水にまつわる映画とドキュメンタリーを紹介します。

元トップ調香師と運転手の再起を描く感動作
『パリの調香師　しあわせの香りを探して』

　アンヌ（エマニュエル・ドゥヴォス）は、ディオールの香水❝ジャドール❞をはじめ、数々の名作を手がけてきた花形調香師。
　けれども現在は、芳香剤や悪臭対策などの仕事を引き受けながらひっそりと暮らしています。
　気難しいアンヌは、タクシー会社の運転手たちからも不評を買っていましたが、なぜかギヨーム（グレゴリー・モンテル）のことを気に入り、運転手に指名。
　ギヨームはアンヌに我慢がならないものの、娘の共同親権を得るために仕事と新しい家が必要なことから、仕方なく引き受けます。

　何気ない会話を通じて、ギヨームはアンヌが表舞台を退いた理由を知り、彼女もまたギヨームの隠れた才能に気付きます。
　やがてアンヌは「再び香水をつくりたい」という思いを強くしますが……。

　オリジナルの物語ですが、トップ調香師の世界を描くため、ディオールが撮影協力、エルメスの専属調香師が監修を務めた本作。
　香りに敏感なアンヌは、タバコはNG、洗剤の香りが残っているホテルのシーツもNG、という具合で、調香師という仕事の大変さも垣間見れます。
　近寄りがたいアンヌと人懐こい雰囲気のギヨームという凸凹コンビが再起をかけて奮闘する感動作です。

『パリの調香師　しあわせの香りを探して』

2019年製作

DVD　￥4,180
発売元：アットエンタテインメント
販売元：TCエンタテインメント
© LES FILMS VELVET - FRANCE 3 CINÉMA

ディオールの有名調香師に光を当てたドキュメンタリー
『NOSE 調香師 ‒ 世界で最も神秘的な仕事』

　ディオールの初代専属調香師であるフランソワ・ドゥマシーを2年に渡って撮影し、名香が誕生するまでの工程を明らかにしたドキュメンタリー。
　
　ドゥマシーは2006年にディオールに就任以降、パリのラボラトリーと自身の出身地であるグラースに建つアトリエにて、すべてのディオールフレグランスを手掛けていました。
　彼は2021年に退任しましたが、本作は現役時代の終盤に撮影されています。

　パチョリを求めてインドネシアへ、アンバーグリス（龍涎香）というマッコウクジラの体内で作られる結石を確認するためにアイルランドの海岸へ、極上の原料を求めて世界中を旅するドゥマシー。

　古くからバラやジャスミンなどの産地として知られるグラース出身ゆえに花々を愛するドゥマシーは、最高の原料を得るためにいくつかの花農園と専属パートナーシップを結ぶなどして地域の産業を支える活動もしています。

　原材料と生産者への敬意にあふれ、香水に真摯に向き合う名調香師の人柄にも魅了される本作。そんなドゥマシーにとって香水とは？

『NOSE 調香師 ‒ 世界で最も神秘的な仕事』

2020年製作

Prime video、Apple TVで配信中

ラストノートのような余韻に浸れるラブストーリー
『世界一キライなあなたに』

　舞台はイギリスの田舎町。
　失業した26歳のルー（エミリア・クラーク）は、車いす生活を余儀なくされた青年の介護人兼話し相手という仕事を紹介されます。
　期限は6か月で高給という条件を聞き、ふたつ返事で引き受けたルー。

　そんな彼女を待っていたのは、皮肉屋のウィル（サム・クラフリン）。
　元来スポーツ万能でリッチな青年実業家だった彼は、事故で四肢麻痺となり、生きる希望を失っていたのでした。

　ウィルに冷たく当たられても、持ち前の明るさで乗り切るルー。
　ウィルもまた、おかしなジョークを言って笑わそうと必死なルーに次第に心を許します。
　そんな中、ルーは「6か月」の意味を知ってしまいます。ウィルは、人生にかかわる重い決心をしていたのでした。

　パリを大好きな街だと語るウィルは、思いがけない形でルーに香水をプレゼントします。
　それは、ラルチザンパフュームの“パピオン”。
　蝶々の柄のワンピースを着ていたルーにぴったりで、羽ばたいてほしいという思いを重ねたのでしょう。
　香水のシーンはほんのわずかですが、名香のように美しく強くさわやかな余韻を残します。