日本銀行の植田和男総裁によると、今はデフレではなくインフレの状態にあるそうです。食料品の値上がりも続いています。物価の高さで話題になったのは、海外からの訪日観光客向けのある料理。豊洲にオープンした商業施設「豊洲 千客万来」内のお店では、5000円を超える海鮮丼が売られていて、「インバウン丼」と呼ばれているそうです。

江戸の街を模したフードコートフロアは、どこか空港内施設のような雰囲気。メニューを見ると「江戸辻屋」の「本マグロ丼」6980円をはじめ、「本マグロ100%のネギトロが主役の3色丼」6400円、マグロ、サーモン、ブリの「世界で人気の3種丼」は5200円といった強気の価格設定。

以前、都内の寿司チェーンで「英語がない!」と海外観光客が困っていた姿を見たことがありますが、メニューには英語表記も。さすが豊洲市場はインバウンド慣れしています。

さらに「築地うに虎」にも攻めたメニューが。本マグロとウニの丼が4000円台で、ウニやイクラ、本マグロが大量にのった超高級海鮮丼「皇帝」は1万8000円。

4000円台の丼が一瞬安く見えてしまいます。席には、シニア世代の夫婦や、映え写真を撮る港区女子風の華やかな若い女性がいました。

施設を訪れたのはオープンしてすぐだったので、海外の観光客はそこまで多くなかったのですが、新鮮な海鮮をこの価格で食べられるのは彼らにとって安いそうなので……今後さらに人気が出そうです。手頃なメニューを食べ歩きできるフロアもあり、かまぼこ煎餅や卵焼きの店などには行列ができていました。庶民は並んで食べ歩き、リッチな海外観光客は優雅に座って海鮮丼、という格差が生まれそうです。

インバウン丼の波は他の街にも広がりつつあるようです。東京駅内の定食屋では1980円の魚定食に混じって、「ぜいたく丼」と名付けられた海鮮丼が6980円でした。以前から海鮮丼はお高めの印象でしたが、ますます手が届かない存在に……。

では、海外の海鮮丼はいかほどなのか、ニューヨークの日本料理店のメニューを調べてみました。ランチメニューで「海鮮丼」27ドル、「大吟醸ばらちらし」59ドル……と1ドル150円をかけるのも恐ろしい価格帯。「アウトバウン丼」も半端なかったです。(漫画家・コラムニスト、エッセイスト)