サブスクで映画を観ることが当たり前となりつつある昨今、その豊富な作品数ゆえに、一体何を観たら良いのか分からない。そんな風に感じたことが、あなたにもありませんか。本コラムでは、映画アドバイザーとして活躍するミヤザキタケルが水先案内人となり、選りすぐりの一本をあなたにお届け。今回は2016年公開の『二重生活』をご紹介します!

『二重生活』(2016年・日本)

(配信:U-NEXT / Hulu)

小池真理子原作の同名小説を、『正欲』『あゝ、荒野』の岸善幸監督が映画化。恋人の卓也(菅田将暉)と同棲生活を送る珠(門脇麦)は、大学院で哲学を学んでいる。担当教授の篠原(リリー・フランキー)に、ひとりの対象を追いかけて生活や行動を記録する“哲学的尾行”を修士論文の題材にするよう提案される珠。はじめは戸惑っていたものの、近所に住む石坂(長谷川博己)を街で偶然見かけ、尾行の対象に選ぶのだが…。

尾行をした経験があなたにはあるだろうか。パートナーの浮気を疑うか探偵でもない限り、する必要がないであろう尾行。そんな未知なる世界へと足を踏み入れていく珠と共に、そこに宿るスリルや背徳、果てにはさまざまな人のあり方までもが見えてくる。人は誰しも、他人には見せない、他人には知られたくない一面を持っている。日頃人には見せない部分が人の本質なのか、日頃人に見せている部分は偽りなのか、目に見えるものだけで人の本質など判断できるのか…。

尾行にのめり込み、他人の秘部とも呼ぶべき箇所を無断で覗き見ていく珠の姿に、あなたの心は一体何を思うだろう。 “尾行” という行為を通して、他人を、自分を、人間というものを見つめ直す時間を得られる力作です。

(C) 2015「二重生活」フィルムパートナーズ

※本稿記載の配信サービスは執筆時点のものになります。

ミヤザキタケル1986年生まれ、長野県出身。2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。 WOWOW・宝島社sweet・DOKUSOマガジンでの連載のほか、ラジオ・配信番組・雑誌などで映画を紹介。イベント登壇、MC、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジュ」など幅広く活動中。