「うちの子、中学受験は大丈夫かな?」「そもそも、いつから塾に通わせればいいの?」

中学受験は、子どもにとっても親御さんにとっても、大きな挑戦です。中学受験を成功させるために、知っておきたいポイントを和田秀樹さんが詳しく解説します。

※本稿は和田秀樹著『勉強できる子が家でしていること』(PHP研究所)より一部抜粋・編集したものです


中学受験塾にはいつから入るべきか

かつては小学4年生から塾に通わせるのが一般的でしたが、最近は低学年クラスが用意されており、小学1、2年生から通わせたほうがいいのではと考える方も多いと思います。

しかし、一般的に中学受験塾のカリキュラムは発達の差を考慮したものにはなっていません。そのまま強引に通わせて、発達の遅い子に辛い思いをさせてしまうリスクよりも、事前準備として、計算や漢字の読み書き、基本の読解術などを教えてくれる地元の補習塾や公文式に通わせてから、中学受験塾にステップアップしていくほうが、子どもにとってはずっと安心だと思います。

子どもが初めて通う塾は、「勉強ってこんなに楽しいんだ!」と思わせてくれるようなところがよいでしょう。

例えば「花まる学習会」は、詰め込み型の学習塾と違って、まるで遊びを楽しむような学習スタイルで人気の塾です。子どもの意欲を引き出してくれると評判ですが、子どもの性格や特性によっては合わないこともありますので、試しに通わせて反応を見てから判断してください。

人気の塾でも、その子にとって「楽しくない場所」であれば、無理に行かせるのではなく、他の塾を探してあげましょう。

中学受験をする、しないにかかわらず、低学年のうちに子どもの基礎学力を固めたいという場合には、科目別の塾を利用するといいでしょう。

英会話スクール(ネイティブの先生と簡単な会話を楽しむ)、英語塾(英検の「級」をとるために文法力や単語力を身に付ける)、国語塾(読解力を身に付ける)など、子どもの興味やレベルに合わせて選んであげてください。


中学受験に向いている子と向いていない子がいる

小学校高学年になると、いよいよ中学受験を考えるころです。「子どもが行きたがっている学校がある」「親として行かせたい学校がある」などの強い思いがあるならば、中学受験に挑戦する価値はあると思います。

というのも、中学受験のための勉強は、計算力や読解力、漢字力、語彙力など基礎学力が身につくうえに、学習の習慣づけにもつながるからです。

ただし中学受験では、ひらめきやセンスを必要とするハイレベルな学力や抽象思考力などが求められるため、子どもの発達や性格によっては向いていない子もいます。

残念ながら発達が遅い子にとっては、不利になってしまうのが現実です。子どもの能力特性に合った出題傾向の学校を選ぶことも、中学受験では重要なことです。

そのうえで、性格的には競争好きで、負けん気が強いほうが向いています。傷つきやすくてプレッシャーに弱い子は、受験に失敗してしまったときに耐えられないかもしれません。そういう子にわざわざ無理をさせる必要はないと、私は考えます。子どもの性格や特性を考慮した選択をしてあげましょう。


志望校選びは、子どもとの相性を見極めて

名門校を目指すのか、附属校や公立の中高一貫校から選ぶのか——志望校選びは、よく考えて決めることが大切です。学校選びの際は、「子どもとの相性」をしっかりと見極めてあげましょう。もちろん中学受験をしないことも、ひとつの立派な選択です。

志望校を選ぶ際には、子どもと一緒に文化祭や説明会に行ってみることをおすすめします。学校の雰囲気を実際に見たうえで、子どもがどう思うか聞いてみてください。自らの意思で「行きたい」というようになれば、勉強も頑張れるでしょう。

志望校を選ぶ際に無視できないのが、偏差値です。偏差値とは学力のレベルを示す評価基準のことで、50が平均値です。ただし、偏差値は同じ内容のテストでも、そのテストを受けた生徒の学力や人数によって変わってきます。偏差値とテストの難易度は、必ずしも一致しません。

一般的に偏差値60と聞くと難関校と思いがちですが、出題傾向や配点によっては、偏差値60に届いていない子であっても「やさしい」と感じることだってあり得ます。偏差値だけでなく、体感難度を考慮した学校選びを意識してください。

中高一貫の名門校にこだわるあまり、ぎりぎりでもとにかく受かればいいという考え方はリスクを伴います。入学時の成績がビリでも、そこから這い上がって上位を目指すような気概のある子ならば心配ないのですが、まわりの子に勉強で勝てないため自信を無くしてしまう子もいます。頑張って勉強して入った名門校のメリットを享受できないまま、劣等生として落ち着いてしまう子も少なくありません。

また、大学受験の負担を軽くしてあげたいという親心から、大学の附属校を選びたくなる方も多いでしょう。ですが附属校への進学は、子どもの進む大学を中学受験の時点で決めてしまうことでもあります。子どもの伸びる可能性を奪うことにならないか、しっかり考えたうえで選択すべきでしょう。

附属校の内部進学では内申点が重視されるので、まじめで従順なタイプが評価されやすくなります。発達の凸凹があったり、強い主張のある子にとっては窮屈に感じるかもしれません。

ちなみに内部進学で理学部や医学部を目指す場合には、その条件はかなり厳しく、外部受験よりかえってハードルが高くなってしまうこともありますので、事前によく調べておきましょう。

文科省主導で1999年に導入された公立の中高一貫校は、併設型と中等教育学校と連携型の3タイプがあり、進学実績も悪くありません。私立と比べて学費が安く抑えられる(中学3年間は無料)ので、ダブルスクールで大学受験に備えることも可能です。

ただし中学受験での競争倍率は高く、入学試験では「適性検査」や「作文」を採用している学校が多いため、特別な対策が必要でしょう。


受験塾の選び方、2つのポイント

受験塾を選ぶ際のポイントは2つです。

1つは実績を見るということ。実績があるということは受験対策のノウハウがよいと判断できます。もちろん、実績を見るときには、合格者数だけを見るのではなくて、きちんと分母も見なければなりません。何人中何人が入っているのかということです。

たとえば、1万人もいるような塾でしたら、たとえ何十人かが開成中学に受かっていたとしても、それほど大したことはないということになります。ですから、分母も含めて実績を見るということが必要です。

また、できない子をどの程度伸ばしているのかというデータを出している塾もありますので、そういうことも実績の一つとして見極めるべきでしょう。

いまは塾同士の競争が激しいので、「このぐらいの成績の子をこの学校に受からせました」とか、「わからないことを残さないように個別に指導しています」とか、「何時までかかっても、納得がいくまで教えます」という説明をしてくれるはずです。

そのときに、「入塾時とその後で、どのくらい成績が伸びた実績がありますか」と聞いてみて、そういう情報の開示が進んだ塾を選ぶとよいでしょう。

また、トップ校だけでなく、二番手、三番手の中堅校の合格実績もあわせて確認しておきましょう。誰もがトップ校に行けるわけではありません。途中で、第一志望を中堅校に切り替えることもあるでしょう。名門塾の中には、中堅校対策がすっぽりと抜け落ちているところが意外と多くありますので、あらかじめ調べておきましょう。

2つ目のポイントは、自分の子どもの能力に合った塾に入れるということです。一流中学への高い合格実績を誇る塾であっても、自分の子どもにとって、過度の背伸びをさせるようだと逆効果になります。塾に入ったとたんに、いきなり「わからない」「ついていけない」という体験をさせるのはよくありません。