PRESIDENT Online 掲載

アスリートでありながらセレブとなった大谷翔平。なぜ、グラウンド外の一挙手一投足もここまで注目されるのか。『米番記者が見た大谷翔平』(共著/朝日新書)を刊行したばかりのジャーナリスト・志村朋哉さんは、「批判される機会も増えるのがアメリカでセレブになる宿命」という――。

■球界唯一のセレブとなって

アメリカ人口第2位の大都市ロサンゼルスは、「エンタメの都」と呼ばれる。そのロサンゼルスの象徴ドジャースに移籍した大谷翔平は、良くも悪くもエンゼルス時代とは比べ物にならないほど世間の注目を集めている。

実際、シリーズ開幕と同時にグラウンド外のニュースで日々洗礼を受けたが、逆境の時こそ、その人の本質が表れるという。まさに今年は大谷の第二幕の年となるだろう。

ドジャースのユニフォームを着るまでを振り返ってみよう。

昨年12月に自身のインスタグラムで移籍を発表してから、大谷はシーズン前から世間を大きく賑わせた。

北米スポーツ史上最高となる総額7億ドル(約1000億円)での契約は、米メディアでスポーツの枠を超えるニュースとして扱われた。スポーツに興味がない層にも、「超大金持ちの野球選手」として認知されるようになった。大谷がアメリカの野球界で唯一の「セレブ」になった瞬間といえるかもしれない。

2月末には、またもインスタグラムにて自身の結婚を電撃発表。アメリカでは、日本のような騒ぎにはならなかったが、それでも米球界では異例なことに、地元やスポーツのニュースとして取り上げられた。

■オオタニ観の日米の温度差

そして、3月の韓国での開幕戦シリーズの真っ最中に起きた「水原事件」。ダグアウトで談笑する大谷と水原一平通訳の姿が中継に映った第1戦の後に、ドジャースが水原を解雇したという衝撃のニュースが流れた。3週間後には、連邦地検が水原を訴追したと発表。訴状によると、違法スポーツ賭博で4000万ドル(約62億円)以上の負けが生じた水原が、大谷の銀行口座からブックメーカーに1600万ドル(約24億5000万円)以上を無断で送金していたという。

大谷を公私ともに最も近くで支えてきた水原の違法賭博疑惑は、セレブの街ロサンゼルスにぴったりなスキャンダルである。ドジャース移籍以上に米メディアで大きく取り上げられた。

日本とアメリカでは、こうした大谷の話題に対しての反応に違いがある。

結婚について言えば、突然SNSで結婚を発表して、会見を開いたにもかかわらず、奥さんの素性を明かさなかった大谷の言動を不思議に感じたアメリカ人は多かった。

アメリカでは、有名人に恋人や配偶者がいるのは当然との認識があり、当事者たちもそれを隠したりはしない。私生活をSNSで公開するのも珍しいことではない。だから、婚約や入籍をしても、わざわざ会見を開いて発表するということもない。

「アメリカ人からすると、『何を隠しているんだ、本当にいるのか、何かおかしい』と思ってしまうかもしれない」とロサンゼルス・タイムズでコラムニストを務めるディラン・ヘルナンデスは言う。