4月26日放送のCBCラジオ『北野誠のズバリ』には、「心臓がプルプル震える」という47歳男性から相談が寄せられました。 この相談に心療内科本郷赤門前クリニック院長で医学博士の吉田たかよし先生が答えますが、スマートフォンとの関係があるとか。スマホユーザーの方は要注意です。

     

心臓がプルプル

まずは相談内容を詳しくみてみましょう。

「時々心臓がプルプル震えて、『あ、胸ポケットのスマホのバイブ機能が動いている』と思ったら心臓だったということがよくあります。
小さな痙攣のような感覚ですが、痛みもなく、毎日でもないです。何か心臓に負荷がかかっているのでしょうか?」(Aさん)

こんな風に心臓がプルプル震えることはあるのでしょうか?

吉田「実際に心臓の筋肉が震えることは比較的多くあります。医学では『細動』と言います。
細動にはすぐ死亡するタイプとそうではないタイプとあります。圧倒的に多いのはすぐには死亡しないタイプです」

中高年になると増える

吉田「心臓には心房と心室と2種類の部屋があります。全身から戻ってきた血液は、まず心房という待合室のようなところに入って、それがすぐ下の心室という別の部屋に送られて、そこがぎゅっと縮んで血液が全身に送られるという仕組みです。

心室が細動を起こすと、血液は循環できずすぐ死亡します。これはめったに起きません。

一方、心房が細動を起こす場合は、次の心室はすぐ下なのでまあまあ血液は下に進んでくれるので、血液の循環は確保されます」

吉田先生によれば、この心房細動は中高年になると徐々に増え、80歳を超えると10人にひとりがなるそうです。

血栓が脳に

心房細動は「47歳くらいから増えてくる」という吉田先生。

吉田「すぐに倒れることはめったにないですが、最大の問題は、心臓の壁が震えるんで、その振動によって心臓の中に血の塊、血栓ができてしまいます。それが心臓から血液として全身に送られますが、当然脳に送られることもあります。

脳の血管はどんどん枝分かれして徐々に細くなります。どこかの段階でこの血栓が血管にすぽっと詰まります。そうすると脳梗塞になってしまいます。これは怖いです。

脳梗塞は一般には脳の血管が動脈硬化を起こすことでなりますが、それに比べ、こっちは血の塊が飛んでくるので、症状はかなり重くなります」

内科を受診を

今回相談したAさんは、今後どうすればいいでしょうか?

吉田「もし心房細動を起こしているのなら、脳梗塞を起きないように血栓ができにくくなる薬の服用など、対策が必要です。

あと、実際には心臓自体は震えているわけではない、でも心臓が鼓動を打つリズムに異常が生じた場合は、本人の感覚としては心臓が震えているように感じる。
これも結構よくあることで、中には危険な病気もあります。

できるだけ早く内科を受診していただいて、まず心電図検査。さらに心房細動だった場合は心臓のエコーを取っていただいて、心臓の中に血栓ができていないか、調べる必要があります」

左の胸のポケットはNG

心臓に関係なくスマホのような振動を感じることはあるのでしょうか?

吉田「スマホが振動してないのに、振動しているように感じる経験をもっている方は多いと思います。医学では『ファントム振動症候群』といいます。ファントムは幻の意味です。

これは1990年代に論文が出ていて、当時使われていたポケットベルで起き始めました。それがスマホに置き換わったわけです。

アメリカのある論文では、68%の人が実際はスマホが振動してないのに、振動していると感じる経験をしています。
それも胸のポケットに入れていると特に起きやすい。しかも、その場合は健康被害につながりやすいとわかっています。

人間の脳は突然振動を感じると交感神経が刺激をうけて、それだけで血圧と心拍数が上がります。
これは突然振動を感じると、敵に襲われるといった危険な状況になった可能性があるので、危険に対処するために一気に全身を緊張モードに切り替える。だから血圧も心拍数も上がります。

そもそも振動でスマホの着信を知ること自体、あまり健康にはよくないですが、さらに左胸だと、血圧上昇心拍数増加と胸の違和感が脳の中で結びつきます」

その上で「左の胸のポケットにはスマホをいれないこと」と注意喚起した吉田先生でした。
(みず)