タイ下院は3月28日にカジノ合法化に関する研究報告書を採択し、内閣に提出して最終决定を求めた。セター首相をはじめとする閣僚も前向きであるため、タイのカジノ合法化はほぼ確実との見方が広がっている。一方で、東南アジアですでにカジノなどを合法化している8カ国は、タイでのカジノ開設に影響を受けることは必至で、特にシンガポールやカンボジアは大打撃を受けるとの指摘もある。香港メディアの亜洲週刊はこのほど、この話題を紹介する記事を発表した。以下はその主要部分だ。

タイでは観光業がGDPの約20%を占めるなど、経済の柱の一つだ。また、タイ政府は観光客をさらに呼び込むために、自国を「イベントの都」にすることに取り組んでいる。セター首相も、世界的な大物歌手によるコンサートを開くなどして観光業、ひいては経済全体の成長を刺激すべきと主張してきた。タイでは実際に、2024年8月には日本発の音楽祭であるサマーソニックをバンコク引っ越し開催するなどの動きがある。

カジノの合法化も自国の「イベントの都」化の一環であり、下院での研究報告書の採択では、出席した議員257人のうち、253人が賛成票を投じた。同報告によれば、カジノを伴う大規模な娯楽センターを開設すれば、旅客1人当たりのタイ国内での支出額はそれまでの52%増の6万5000バーツ(約27万3000円)に達し、観光業収入を最大で4480億バーツ(約1兆8800億円)押し上げ、GDP成長率を1.16%追加するという。

東南アジア地域では現在までに、マレーシア、フィリピン、カンボジア、シンガポール、ベトナム、ミャンマー、ラオスの7カ国がカジノの開設を認めている。認められていなかったのは、タイを除けばインドネシア、ブルネイ、東ティモールだ。

タイにカジノが開設された場合、同じ業界や税収が最も大きな影響を受けるのは、観光客、特に中国人観光客の多くがカジノを利用するカンボジアとシンガポールとみられている。

タイ下院が採択した報告書は政府に対して、賭博の経営業者に売上高の17%を課税することや、利益の20%−30%に相当する法人税を課すことを提言した。この税率は東南アジアでは2番目に低く、カンボジアをわずかに上回っている。

カジノの合法化で最も大きな争点になるのは一般的に、いわゆる「ギャンブル依存症」など、自国民に対する悪影響だ。シンガポールの場合、国民および永住者がカジノに入場するには、150シンガポールドル(約1万7000円)の1日券を購入するか、3000シンガポールドル(約34万円)の年間券を購入する必要がある。一方で、外国人ならばパスポートを提示すれば入場料が無料になる。

カンボジアでは、外国のパスポートを提示しないとカジノに入場できない。つまりカジノは外貨獲得の手段としてのみ、存在を認められていることになる。カンボジアでは現在、首都プノンペンにあるカジノセンターを始めとして、国内に数十カ所のカジノがある。

フィリピンでもカジノなどギャンブル産業が急成長している。同国では1977年にギャンブルが合法化された。同国では現在、大統領が所管するゲーミング管理公社であるPAGCORがギャンブル産業を所管している。PAGCORによると同国国内には43カ所にカジノがある。PAGCORは自国のギャンブル産業の規模が早ければ2025年にはシンガポールを抜き、東アジア地域ではマカオに次ぐ第2の規模になると予測している

なお、フィリピンではオンライン賭博で中国人など外国人を呼び込むオフショアブックメーカーが多く存在する。法律上のグレーゾーンであり、悪質な業者も存在して社会問題を引き起こしていることから、オフショアブックメーカーは批判の対象になっている。(翻訳・編集/如月隼人)