香港は150年以上、英国統治下にあったことから、中国本土の都市とは異なる発展を遂げ、アジア随一の金融都市となった。1970年代生まれの筆者の幼い頃、香港はまだ返還前で、グルメ、ショッピング、観光の一大都市として有名で、オリエンタルな華やかさがあるイメージだった。97年の返還後、日本人観光客は減った印象だ。その後の円安で日本からの海外旅行はコスト高になり、逆に日本へ海外旅行者が大量に訪れる状況になっている。実に時代を感じる話だ。筆者が初めて香港を旅行したのは2008年で、18年にも再訪している。このほど、週末を利用して香港を訪れた。現在の街の様子を紹介する。

香港の地理をおさらいすると、香港島、九龍半島、新界、離島にエリアが大きく分かれている。日程の制限もあり、今回筆者がメインに回ったのは九龍半島のモンコック(旺角)と香港島のセントラル(中環)。この二つのスポットは街の様子がかなり異なっており、コントラストが面白い。

まずは下町情緒あふれるモンコックから紹介する。

「香港に来たら朝は絶対これ!」な飲茶

日本でも最近は朝ごはんが食べられる飲食店が増えてきたと聞くが、香港ではせいろで蒸したシューマイや肉まん、ギョーザなどが売られている。飲茶店「ロンドン大酒楼」は日本人観光客にも有名で、地元客もたくさん訪れる。

時折ワゴンが回ってきて好きな料理をオーダーできる


おなかが満たされたところで散策を開始。筆者は普段上海に住んでいるが、同じ中国といってもここは文化圏が異なるため、とても面白い。街並み一つ取っても、面積が狭いため、建物は細く高い。また、高温多湿で、強烈な日差しや雨季の急なスコールを避けられる「唐楼」と呼ばれるアーケード建築が各所で見られる。


70年代に唐楼の新規建造が禁止され、現在残る建物はすべて年季が入っている。中には20〜30年代に建てられた歴史建築もある。

飲食店に子豚の丸焼きがぶら下がっていた。香港・広東エリアの人は祝い事があると子豚の丸焼きを食べる風習があるそう。


シャムスイポー(深水埗)まで来た。この辺りは「ガラクタ市」と呼ばれ、SIMカードなどの家電小物・アクセサリー、バッグやベルトなど、雑多な物を販売している。



ガラクタ市の中にいかにも香港らしいヘビ料理の店を発見した。


「初心者なもので…」と店の人に話すと、「ヘビ肉のとろみスープ」を勧めてくれた。独特の臭みがあるのではとこわごわ食べてみたが、全く感じず、むしろどこにヘビ肉があるのだろうという感じだった。注意深く見てみると、たしかにヘビ肉がスープの中にある。あっさりした鶏肉のようなおいしい肉だった。

歩みを進めると、レコード店を発見。レコードやCDが棚に収まり切らず、床にも積み上がっている。カウンターで店主が丁寧にレコードの溝のほこりを拭いて手入れをしていた。「何か探している物があったら言ってね」と話しかけてくれた。


お昼はローストダックとローストチキン載せご飯

ランチセットを頼むと香港人や広東人が毎日炊いて飲む煲湯(バオタン:とろ火で食材をじっくりゆでたスープ)が付く

古い建物と超高層マンション。市街地ということもあり、一区画一区画はそれほど大きくない。香港らしい風景だ。(提供/フライメディア)