隼(HAYABUSA)のネイキッドを意識させない怪物コンセプト!

2001年の東京モーターショーでスズキからリリースされたコンセプトモデル、B-KINGに世界中のスズキ・ファンは狂喜した。 各社300km/hを超えるスーパーフラッグシップが狂走する中で、ひと際グラマラスでなまめかしさを湛えるHAYABUSAのオリジナリティの強さに優越感を覚えていたスズキ・ファン。 その隼(HAYABUSA)がありながら、またもや世界中をアッといわせるスーパーネイキッドをデビューさせたからだ。

折りしも他社からフラッグシップもネイキッド版が繰り出される気運だったが、スズキはベースが隼であるのさえ忘れさせてしまうインパクトを引っ提げたコンセプトモデルをローンチしたのだ。 その「l怪物」を漂わせる強烈なデザインもあったが、何より注目を浴びたのが「スーパーチャージャー」が装着されていたこと。

隼でも175HPと超弩級パワーだったが、B-KINGはスーパーチャージャー吸気を強制的に押し込むことで、240HPが可能と表示されていた。 しかもタイヤサイズが、フリント150でリヤは240という見たこともない太さ!

それだけではない、いまや常識のLEDウィンカーをはじめ、カーボンファイバー、ステンレス鋼、アルミニウム、革などの高級素材をふんだんに使用、 高度なコンピューターシステムがバイクに統合され自己診断システムから携帯電話をメンテやセットアップに活用できたり、雨が降った地域に向かう場合に備えた GPS ベースの気象警報システム、 さらにはバイザーをディスプレイとして使用するGPSナビゲーションシステムを備えたヘルメットを開発している等々、まさに夢のバイクといえる革新的な内容だった。

牙を抜かれた製品版でも熱狂的ファンがいるのがスズキの強み!

ところが、そうした期待感を世界中から集めたものの、B-KINGは一向に製品化される気配をみせない。 そして人々がB-KINGを忘れかけた2008年、そのルックスがコンセプトモデルにかぎりなく近い製品版が輸出仕様のみ発売されることとなった。 ただファンにとっていちばんのショックは、スーパーチャージャーが搭載されていないこと。 1340ccで183PSとモーレツであるには違いないが、リヤタイヤが200とこれまた最大ワイドであっても、コンセプトモデルの「怪物」ぶりはかなりスポイルされてしまった。

センターアップの巨大なマフラー・サイレンサーが後ろへ2本突き出たフォルムと、特徴的な顔つきのヘッドライトまわりなど、スズキのネイキッド系はこのB-KINGイメージを踏襲していて、そうしたネイキッドのフラッグシップとしての位置づけなのだが、押しの強さを削がれたイメージで注目度がかなり下がってしまったのは否めない。

しかし実際に街中から郊外まで、ライダーが走り回るようになると、1340ccもの巨大なエンジンでもハンドリングが扱いやすいと好評だった。 何よりYouTubeでテストコースを290km/hまで加速するシーンを見せられると、スズキ・ファンたちが誇らしげにB-KINGで闊歩する姿を見かけるようになりはじめた。

とはいえ、ひとたびインパクトの下がったイメージは拭い難く、カラーリングに定番のスズキ・ブルーを纏ったモデルも加えられたが短命に終わる結果となった。 しかしこの強烈な「怪物」イメージのルックスと共に、ある層には人気がある傾向はいまも続いていて、ファンには記憶から消え去ることのないモデルでもある。