令和5年度大幅拡充!仕事の両立を図る会社への支援

 現在、介護と仕事の両立を図るために様々な施策が行われています。高齢化社会の中で要介護者が増えることもあり、介護の担い手として働き盛りの世代が受け持つことになるからです。現在、育児介護休業法により、家族の介護のために休む労働者には介護休業が1対象家族当たり計93日間、最高3回まで分割して取得できることとなっています。また、雇用保険より介護休業給付として休業前給与の約67%が労働者に支給されます。

 厚生労働省の研究会では病児看護や障害児の介護についても介護休業や介護休暇等の両立支援制度の活用を図って行くこととされています。

 仕事と介護の両立のための様々な支援に取り組む会社への助成金として「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)」があります。介護に取り組む労働者(対象者)が介護休業の取得や復帰、両立支援制度を導入した企業に支給されます。令和5年度から更に個別に介護休業取得促進を周知する事業主や代替職員を雇用する事業主への助成も設けられました。

受給のポイント

① 就業規則や育児介護休業規定に介護支援プランや介護両立支援制度を規定する必要があります。
② 介護休業の取得については、同一の対象家族に所定労働日に合計5日以上取得した場合(分割可)に対象になります。
③ 職場復帰時の助成金を受けるには原職等へ復帰後、申請日までに3カ月以上継続雇用する必要があります。
④ 対象家族は介護被保険者証の交付や要介護認定通知(要介護度2以上)を受けていないものでも、医師の証明や事業主と労働者連名の申立等で常時要介護が必要な者であることが分かれば対象となります。
⑤ 両立支援助成金については、対象労働者について事業主の親族であっても問題ありません。例えば、事業主と別居している娘でもあっても、雇用保険適用事業所に勤務を行い雇用保険被保険者であれば、対象労働者になりえます。例えば事業主の母(娘にとっては祖母)の介護を行うために休業しても、助成金の対象休業になりえます。
⑥ 助成金の対象になる休業は同一の対象家族につき1回限りですが、介護休業については3回まで分割取得が出来るので2回目以降の介護休業について助成金の対象休業とすることが出来ます。
⑦ 両立支援等助成金は喪失原因3(事業主の都合)による退職者がいても活用できます。

令和5年度改正点

① 個別支援、環境整備加算が新設されました。個別支援、環境整備両方実施した場合、追加で助成金が支給されます(15万円)。
② 業務環境代替支援加算が新設されました。新規に代替要員を雇用するかまたは社内の代替要員に手当支給を新設すると支給されます(代替要員雇用20万円、手当新設5万円)。

お勧めポイント

 中小企業だけが対象ですが、1企業当たり1年度5名まで対象になります。もともと令和2年度で廃止予定の助成金でしたが、仕事と介護の両立支援を更に図るとして令和3年度以降も継続されました。令和5年度は更に拡充されています。社員の介護離職を防ぐ面からも役立つ助成金と言えます。

就業規則規定例

第〇〇条 会社は、介護休業の取得または仕事と介護の両立に資する勤務制度(以下、「介護制度」という)の利用を希望する従業員に対して、円滑な介護休業の取得及び職場復帰並びに円滑な介護制度の利用を支援するために、当該従業員ごとに介護支援プランを作成し、同プランに基づく措置を実施します。
2 介護休業の取得を希望する従業員の介護支援プランに基づく措置には、下記事項を含むものとし、当該従業員との面談により把握したニーズに合わせて定め、これを実施するものとします。
(1)業務の整理・引継ぎに係る支援
(2)介護休業中の職場に関する情報及び資料の提供
3 介護制度の利用を希望する従業員の介護支援プランに基づく措置には、下記事項を含むものとし、当該従業員との面談により把握したニーズに合わせて定め、これを実施するものとします。
(1)介護制度利用期間中の業務体制の検討

助成金制度の概要

主な要件

筆者:岡 佳伸(特定社会保険労務士 社会保険労務士法人岡佳伸事務所代表)

大手人材派遣会社などで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。
日経新聞、女性セブン等に取材記事掲載及びNHKあさイチ出演(2020年12月21日)、キャリアコンサルタント

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