人事業務に携わるようになって33年が経つ。新卒で入社後すぐに配属されたのが人事部だった。「サブロク協定ってなに?」の状態から、労働法令・社会保険手続き・給与計算・年末調整といった一連の業務を必死に覚えた。入社3年目の秋に社労士資格取得を決意し、翌年の受験で合格することができた。独立開業するのはかなり後のことだが、私の職業人生は人事労務業務をメインに進んでいくこととなった。

 中でも人材派遣業界での就業経験は、今の社労士業務につながる部分が多く、いろいろな雇用問題に直面してきた。

 派遣スタッフ・派遣先企業からの相談は実にさまざまで、働き方の相談から、労働者派遣法、社会保険や給付金のこと、職場での人間関係やトラブルまで多くの相談が寄せられた。

 労働者派遣は通常の労働契約とは異なるため、法律の規制も厳しく難しい。とはいえ、圧倒的に相談として多いのは人間関係に関するものだった。きちんとコミュニケーションが取れていれば起きなかったかもしれない問題に、派遣元の担当者として、両者の間に入って対話をすることで解決へと導いていく。それは簡単なことではなく、コミュニケーションの重要性を痛感してきた。

 もちろん派遣という働き方は難しいことばかりではない。うまく活用すれば柔軟に働ける良い仕組みだ。私自身も子育て中に派遣社員として働いたことがあり、状況に応じて希望条件を選べるところが最大のメリットだと思っていた。

 今は派遣でなくても柔軟な働き方を取り入れている企業が増えてきており、とてもうれしい変化を感じる。ただそれが中小企業の労働者にまで浸透していくにはまだまだ課題となるところも多い。私がこれからも支援に力を入れていきたいことの1つである。

 時代とともにコミュニケーション方法が大きく変わり、課題が変わってきたように、今後も企業に必要な支援は変化していくのだろう。時代の流れを読みながら、その時の課題に真摯に向き合っていきたい。

 最後に、現在私が社労士として活動できているのは、間違いなく新卒で入社した会社のおかげだ。当時は苦労の連続だったが、社労士としての道を開いてくれたことに感謝している。人生全般に言えるが、後になってその出来事の意味が分かることは多い。社労士事務所を開業して5年目となる今、この仕事を天職と信じ、企業が抱える課題解決に取り組む日々を、時に悩みながらもやりがいを持って邁進している。10年後からこの時点を振り返った時、どのような答えが出ているのか楽しみでもある。

社会保険労務士事務所K.コンサルティング 代表 西田 圭子【福岡】