ドジャースの山本由伸(25)が30日(日本時間31日)、本拠地でのカージナルス戦にメジャー2度目の先発登板し、5回68球を投げて2安打無失点、5奪三振の内容で勝利権利を持ったまま降板したが、チームが7回に逆転され、メジャー初勝利はお預けとなった。

次回登板が6日(日本時間7日)のホワイトソックス戦

ソウルの悪夢は忘れ去った。21日の韓国でのパドレス戦のデビュー戦で初回に5点を失いKOされるという最悪のスタートを切ることになった山本がカーブとスプリットを決め球に3者連続三振という最高の立ち上がりを見せた。MVP男のゴールドシュミットも見送ればボールのスプリットに手を出した。
3、4回と続けて3者凡退。だが、5回を前に雨足が強くなって一時中断。約35分の中断となり、まだ小雨が降り続けていたが、再開後もリズムが狂うことはなかった。5回二死から7番のバールソンに左中間を破られる二塁打を許しながらも続くクロフォードを153キロのストレートを高めのゾーンに投じレフトフライに打ち取った。前回と大きく違ったのはコントロール。目先を変えるカーブでストライクを取り韓国では制御できていなかったスプリットもひざ元のいい高さから落とした。5つ奪った三振のうち3つがスプリット。ストレートのスピードも十分で、3億2500万ドル(約492億円)の男にふさわしいピッチング内容でファンも首脳陣も安心させた。
その裏、一死一塁から大谷が四球でつなぎ、フリーマン、スミスの連続タイムリーで2点を奪い、山本は勝利権利を得た。まだ68球だったが、この回でマウンドを降りた。だが、継投に失敗、大谷に背番号を譲ったことで知られるケリーが7回に5点を奪われて逆転を許し、山本のメジャー初勝利が消えてしまった。
試合は、9回の土壇場にベッツの一発などでドジャースが同点に追いつく劇的な展開で延長へもつれこんだ。延長10回に1点を勝ち越されたが、その裏、カージナルスの守護神ガエゴスを攻め、一打が出れば逆転サヨナラとなる二死満塁で大谷に打席が回ってきた。WBCではガエゴスからヒットを放っている大谷だが、この日は、甘い球を打ち損じてショートフライに終わった。
米メディアは山本の投球内容をどう評価したのか。
ロサンゼルスタイムズ紙は「山本の立ち直りの取り組みは、先週にこの25歳の投球メカニクスの改善と制球向上に努めてきたチームに安堵をもたらした」と評価。試合前にコナー・マギネス・アシスタント投手コーチが「彼らしく登板して欲しい」と語り、3億2500万ドル(約492億円)の契約をした日本選手の「投球フォームが劇的に向上した」と証言したという。
「彼はここから良くなるだけ。韓国での先発ははっきり言って偶然だったと思う」
クセが盗まれているとの声があったため、山本はグラブの位置を変えていたが、この日は、オリックス時代の投球フォームに戻した。
MLB公式サイトは「韓国からロサンゼルスへ戻る飛行機に乗った瞬間から、彼は第1印象からのやり直しを期した。彼は土曜日にそれを成し遂げ、カージナルス相手に5イニングで5三振を奪い2安打無失点に抑えた」と伝えた。
ドジャースのデイブ・ロバーツ監督のコメントも紹介。
「私は驚かなかった。見れて良かった。2度目の先発で多くを望まないが、これがよりもっと多くのことがもたらされる兆しだと信じている」

同サイトによると、カージナルスは山本から95マイル(約153キロ)以上の打球速度の打球を5本放ったが、山本をトラブルに追い込むことができなかった。
さらに「日本で投手3冠となった山本の鍵はエリート級の制球力を見せることだった。メジャーで一度も投げたことがない山本をスカウトが激賞し、大市場のすべてのチームが彼の獲得に動き、それが最終的に3億2500万ドル(約492億円)の投手となる手助けになったものだった」と紹介。
ロバーツ監督の「(コントロールが良かったことが)大きい。直球を制球よく投げる投手がいるとすれば、それはヨシノブだ。しかし打者を前や後ろへバランスを外し続けることもとても大事なこと。カーブは最も球速が遅い球種だが、打者のバランスを少し外し、タイミングを崩して、そこに空振りを取れるスプリットがとてもうまくいっている。両方の球種が重要だ」という山本評を付け加えている。
スポーツ専門局のESPNは「韓国での悪夢の開幕から9日後に訪れた2度目の先発でカージナルスを5回まで無失点とほぼ圧倒的なイニングを見せつけた。4回後に雨による35分の中断がなければさらに長い回を投げていただろう。ドジャースの救援投手のケリーが7回に5点を許し、大谷が1点を追う10回二死満塁でフライに倒れて、5−6の敗戦となったが、山本の先発からもたらされた励みは、それらのすべてを払拭するものだった」と伝えた。
同サイトは、山本の投球内容を細かく吟味した。
「最初の打者3人を含めて5三振を奪い、空振り9つのうち8つをスプリッターとカーブで引き出した。カーブは、しばしばカウントを戻す球種として使われ、反対にスプリッターは、打者を打ち取る球で機能しているが、マギネス・アシスタント投手コーチは、70マイル(約112キロ)で投じられる最も遅いカーブでストライクゾーンの中で空振りを奪えたことに勇気づけられた。山本の90マイル(約145キロ)より上のフォーシームは捉えるのが難しいもう一つのエリートクラスの球種となり、韓国で43%だったストライク率は79%となった。左打者に投げ込んでいく球種のカッターは、他の3球種が、とてもよく機能していたために省かれたと、マギネス・アシスタント投手コーチは語った」
開幕以来、1番打者として大活躍しているベッツは、「彼は最初の登板の影響なく、素晴らしい立ち直りを見せた。初先発の時は、何が起きたかわからない。プレッシャーやその他色々なものがかかる中ですべてにうまく対処しているのを見ることができてよかった」とコメントしている。
山本の次回登板が6日(日本時間7日)のホワイトソックス戦に決まった。