2022年12月、性別違和のある知人と強制的に性交し、下腹部にけがを負わせたとして強制性交等致傷の罪に問われ懲役9年を求刑された被告の男性(56)=自営業=の裁判員裁判の判決で那覇地裁(佐藤哲郎裁判長)は14日、「犯罪の証明がない」として無罪とした。

 起訴状などによると、被告は22年12月19日、県内で知人と強制的に性交し、下腹部に全治不詳のけがを負わせ、同21日にも同様の犯行に及び、下腹部に全治約10日間のけがを負わせたとして起訴された。検察側は、性的違和のため、男性を恋愛対象としない知人に性交の同意がなかったなどと主張していた。

 佐藤裁判長は、被害者が「意に反する性交を強いられた」として性交の合意がなかった点を認めた。一方、同意がないことについて「(被告が)認識していたと認めるには合理的疑いが残る」とも判示した。

 被告が性交への同意を「誤信した」原因として被害者の言動を挙げ、「親しみの感情を向けられていると感じても不自然ではない」と指摘。被害者が負ったとされる出血を伴うけがについては「加わった力がどの程度であったかは不明」などとして検察側の主張を認めなかった。

 無罪判決を受け、被告側代理人の久貝克弘弁護士は「公正公平に判断いただいた裁判官、裁判員には感謝しかない。今後は名誉回復に努めたい」と述べた。

 那覇地検の小玉大輔次席検事は「主張が認められなかったことは遺憾であり、判決内容を十分に検討し、適切に対応したい」とコメントした。