「自分が嫌いなまま生きていってもいいですか?」横川良明/講談社

 自分を好きになろうとしても、過去にかけられた言葉が心に突き刺さったまま…。本書の著者も、自己愛について悩み、模索する日々だったという。

 『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』の著者であり、ライターの横川さんによるエッセーだ。自分をなかなか好きになれないけれど、幸せに生きたい思いを体験談とともにつづった。

 自分嫌いによって起こる厄介な出来事、いじめやコンプレックスによる苦い経験、自分磨きで試行錯誤した日々…。ユーモアを交えて書かれているが、人によっては心が痛むエピソードもあるだろう。もしかしたらいったん本を読むのを中断してしまうほど、こたえるかもしれない。だがそれだけ著者自身も、心に無数の傷をつくりながら生きてきたということだろう。そして長い道のりを経て、著者が出した自己肯定感についての結論とは―。

 「自分のことを愛せないと他人も愛せない」。こういった風潮を感じるという著者。だが自分嫌いでも“推し”という他者を愛せていることを、自らの人生をもって証明したと続けている。多様性を認め合う時代、自己肯定感に対する考え方もグラデーションでいいのではないだろうか。(講談社/1430円)

(コンテンツ部・池田知恵)