「どっこいしょ」。立ち上がったり重い物を持ち上げる時、口にすることが増えたような気がする。年を重ねた証し? 周りに聞こえていないか、どこか気恥ずかしくなる◆ある定例の会合では毎回、身近な仏教語の紹介がある。その「どっこいしょ」は、霊山登山など修行の際に唱える「六根清浄(ろっこんしょうじょう)」が語源だという。目、耳などの五感と心を合わせた「六根」を清めて欲や迷いを断ち切る。これなら気兼ねせず、堂々と言えそうだ◆罪や煩悩を焼き払い、さらに極めるためではないが先日、火渡り修行を初めて見た。唐津市北波多にある寺院。ホラ貝が響き、白煙が立ち込める中、参拝者も次々とはだしで歩を進めた。「エイっ」と気合を入れ、祈願したものは何だったか◆人口減、高齢化に加えて未婚率も上がる日本。12日に発表された世帯数の推計によると、2050年には65歳以上の1人暮らしが全体の2割になるという。どんな言葉を発しても気兼ねのない日々だろうが希薄な人間関係、孤独、貧困、見守りや医療、介護は…。重い課題が横たわる◆おじいさん、おばあさん、孫に犬、猫、最後はネズミまで加わるロシア民話「おおきなかぶ」。声をかけ、みんなの力を合わせて引っこ抜く。地域社会の「うんとこしょ、どっこいしょ」がますます大切になる。(松)